有識者が選ぶ2023年の展覧会ベスト3:村上由鶴(写真研究/美術批評)

数多く開催された2023年の展覧会のなかから、有識者にそれぞれもっとも印象に残った、あるいは重要だと思う展覧会を3つ選んでもらった。今回は写真研究/美術批評で活動する村上由鶴のテキストをお届けする。

「さばかれえぬ私へ Tokyo Contemporary Art Award 2021-2023 受賞記念展」展示風景より、 竹内公太の作品 撮影=髙橋健治 画像提供=トーキョーアーツアンドスペース
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「さばかれえぬ私へ Tokyo Contemporary Art Award 2021-2023 受賞記念展」(東京都現代美術館/3月18日〜6月18日)

「さばかれえぬ私へ Tokyo Contemporary Art Award 2021-2023 受賞記念展」展示風景より、志賀理江子の作品 撮影=髙橋健治 画像提供=トーキョーアーツアンドスペース

 複数のアーティストが参加する展覧会には、ある作品が他のアーティストの作品と隣接していることによって、作品単体として見たとき以上に思考が深まったり広がったりするかどうかを期待します。受賞記念展なので、偶然に二人展となった作家同士(志賀理江子、竹内公太)ですが現場での体験への関心や、双方の作品を語る際の「リサーチ」、「憑依」というキーワードは共有されていると感じます。が、その内実は全く別物で、最終的なアウトプットが鑑賞者の身体のどこに効いてくるのか、あるいは思考に効くのか、情動に効くのかという鑑賞体験の違いが如実にあらわれていて印象的でした。竹内さんの「風船爆弾」の作品は、何度でも見たいです。

高田冬彦「Cut Pieces」(WAITINGROOM/9月9日〜10月8日)