「デュエット――アジアン・コンテンポラリー」が、東京・恵比寿の東京都写真美術館で開催されている。会期は2027年1月17日まで。
本展は、中国と日本の6名のアーティストによる写真・映像作品を紹介するグループ展。2018年に開催された「愛について アジアン・コンテンポラリー」に続くシリーズ第2弾で、東京都写真美術館の学芸員・伊藤貴弘と、中国の三影堂厦門撮影芸術中心のエグゼクティブ・ディレクター、テン・チンユン(滕青云)が共同で企画した。出品する中国の4作家は、いずれも日本の公立美術館で初めて紹介される。
展覧会タイトルの「デュエット」は、2人で奏でる音楽形式を意味する。異なる声や旋律が互いに応答し合うように、本展では土地と歴史、自己と他者、過去と現在など、複数の視点が交差することで生まれる関係性に着目。作家の選定においても、日中の2人の企画者が互いの提案に応答を重ねており、展覧会そのものが「デュエット」となっている。
出品作家は、村越としや、ワン・トゥオ(王拓)、スイ・タカ(塔可)、ルオ・ヤン(罗洋)、ジャン・ポンイー(蒋鹏奕)、fumiko imano。写真を通じて何を記録し、いかに表現するのか。6名の実践から、その多様な可能性が浮かび上がる。
風景に刻まれた記憶と、交錯する歴史
福島県須賀川市出身の写真家・村越としやは、2006年から故郷の福島を撮影し続けてきた。本展では、東日本大震災以前の2006年と2009年に撮影した作品と、2011年から2020年にかけて撮影した写真を紹介する。

人影のない道路や山林、建物など、日常的な風景を捉えた作品が並ぶ。村越は内覧会で、2011年の震災と福島第一原発事故を、たんに風景を変化させた出来事としてではなく、存在や認識、写真を撮る方法、倫理といった問題をあらためて考える契機だったと振り返った。

また、村越は写真そのものにも様々な二重性が含まれていると考えている。今回の展示も、震災前後という時間的な対比にとどまらず、風景を写すことによって何が見え、何が見えないのかという問いを投げかけるものだ。
いっぽう、中国東北部の吉林省出身のワン・トゥオは、映像を通じて中国の近現代史を再考する。2023年に香港のM+が主催するシグ・プライズを受賞したワンは、歴史的事件や民間伝承、フィクションを重ね合わせ、異なる時代の出来事が現代に及ぼす影響を描いてきた。

本展では、1919年の五四運動から約100年間の歴史を扱う映像連作「The Northeast Tetralogy」から、《Smoke and Fire》(2018)と《Tungus》(2021)の2作品を上映する。

なかでも《Tungus》は、1948年の国共内戦(中国国民党と中国共産党が戦った内戦)下の長春を舞台とする作品だ。物語には中国軍に所属する2人の朝鮮籍兵士が登場し、同時期に朝鮮半島の済州島で起きた四・三事件の記憶が重ね合わされる。離れた場所で生じた歴史的な悲劇が、登場人物たちの経験を通じて結びついていく。
ワンは内覧会で、中国東北部を起点に中国全体、さらには北東アジアの歴史的なつながりを考えたいと説明した。異なる時代や場所の記憶を交錯させることで、直線的な歴史叙述では捉えきれない、近代アジアの複雑な姿を浮かび上がらせている。

































