「Dialectical Landscape / 弁証法的風景」展(Art Center NEW)開幕レポート。地下空間で体感するアースワークの新地平【3/3ページ】

伊阪柊、百頭たけし、高橋臨太郎

 伊阪柊は、人間活動が地理条件を変え、その地理が再び社会や技術の方向性を規定していく地政学的プロセスに着目する。出展作《The Earth Workom》(2026)は、北極圏航路の開発への疑問と、本会場のある横浜で建造されている北極域研究船「みらいII」から着想を得た。温暖化による海氷融解を進歩として正当化する人間のスタンスに疑問を投げかける。会場内外のセンサーに反応してリアルタイムに生成される航路の映像は、北極圏に近づこうとしながらも決して到達できない様子を描き出す。

伊阪柊《The Earth Workom》(2026)リアルタイムシネマ、軽天、藏骼、センサー、アトラクター
左:百頭たけし《無題》(2026)ピグメントプリント、右:百頭たけし《GEOGAZZR》(2026)映像 18分3秒
百頭たけし《無題》(2026)ピグメントプリント

 百頭たけしは、産業廃棄物や家庭ゴミ、漂着物が集まる大都市郊外の「ジャンクヤード」を撮影してきた。今回は、近年はじめたドローンによる上空からの写真・映像を含む作品群を紹介している。解体車両を捉えた作品からは、無造作に配置された人工物と、それを覆う植物という「人為と自然の関係」が写し出される。また、近年の世界情勢による鉄価格高騰でジャンクヤード自体が縮小している現実も重ねられ、世界の動向と、それを容赦なく覆いつくす自然の脅威が表現されている。

高橋臨太郎《Da thing》(2026)映像 31分

 高橋臨太郎は、風や波といった都市空間に潜む「かたちを持たずに作用する力」に着目する。映像作品《Da thing》(2026)では、航行する船の甲板に電子楽器テルミンのアンテナ(銅板)を設置し、作家自身がその上に立って演奏を行う。船の揺れや風といった環境の力が作家の身体を揺らし、その動きがそのまま音へと変換される。

 大地自体の造形作用と人間の造形作用が応答し合う場として「アースワーク」を捉える本展は、会場空間そのものがアースワークの一部として機能している。表現方法の異なる作家たちが、この地下空間の特徴に応答するように作品を展開しており、ホワイトキューブではないこの場所だからこそ実現できた、自然と人間の応答を実感できる機会となるだろう。

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