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「エリック・カール展 はじまりは、はらぺこあおむし」(東京都現代美術館)開幕レポート。絵本の枠を超えた一人の表現者としての創作の軌跡

東京・清澄白河の東京都現代美術館で、『はらぺこあおむし』日本語版50周年を記念した「エリック・カール展 はじまりは、はらぺこあおむし」が開幕した。会期は7月26日まで。会場をレポートする。

文・撮影=大橋ひな子(編集部)

『はらぺこあおむし』1987年版 表紙(1987)エリック・カール絵本美術館

 東京・清澄白河の東京都現代美術館で、「エリック・カール展 はじまりは、はらぺこあおむし」が開幕した。会期は7月26日まで。担当は同館学芸員の八巻香澄。

 エリック・カール(1929〜2021)は米国ニューヨーク州生まれ。6歳でドイツに移住し、シュトゥットガルト州立芸術アカデミーでグラフィックデザインを学んだ。1952年にニューヨークへ戻り、デザイナーやアートディレクターとして活動。67年に作家ビル・マーティン・Jrの絵本『くまさん くまさん なに みてるの?』のイラストを手がけたことで絵本作家としてのキャリアをスタートさせた。ページのかたちや開き方に工夫を凝らし、光や音などのしかけを加えた「遊べる本であり、読めるおもちゃ」を目指し、生涯で約90冊の絵本を制作した。

 本展は『はらぺこあおむし』(1969)の日本語版50周年を記念し、米国マサチューセッツ州のエリック・カール絵本美術館との共同企画により開催されたもの。同作をはじめとした27冊の絵本原画に加え、デザイナー時代の仕事、構想段階の「ダミーブック」、コラージュ用の素材など約180点が展示されている。

『はらぺこあおむし』の誕生

 展示は全4章で構成される。第1章「はらぺこあおむしの誕生」では、同作の原画のほか、着想源となったダミーブック「みみずのウィリーのいっしゅうかん」を紹介している。エリック・カールの制作を象徴するのが、あらかじめ着色した紙を切り貼りするコラージュ技法だ。筆だけでなく、スポンジやカーペットの切れ端、靴の裏などを用いて独自の模様が生み出されている。モチーフだけでなく、それを構成する紙それぞれの素材の違いに着目してほしい。

第1章「はらぺこあおむしの誕生」の展示風景
第1章「はらぺこあおむしの誕生」の展示風景
『はらぺこあおむし』の原案となったダミーブック『みみずのウィリーのいっしゅうかん』(1969)エリック・カール絵本美術館

 会場に並ぶ「ダミーブック」も重要な見どころのひとつ。エリック・カールは物語の流れや構成を練る際、絵コンテの役割を果たす手製の見本をつくる。完成した絵本とは異なるイメージが残されていることも多く、創作のプロセスを辿ることができる。本展では、日本での開催では最多となる12点のダミーブックが展示されている。また、70以上の言語に翻訳された各国版の紹介からは、本作が世界中の子供たちに愛されていることがうかがえる。本章ではあわせて、虫を主人公とした『くもさん おへんじ どうしたの』や『だんまり こおろぎ』などのシリーズ作品も展示されている。

様々な言語で出版された『はらぺこあおむし』
第1章「はらぺこあおむしの誕生」の展示風景

編集部