本展はさらに、音楽・サブカルチャー・ファッション(第3章)、現代医学とエイズ危機(第4章)、家族やジェンダーをめぐる私的空間(第5章)、日用品や身近な素材から生まれる表現(第6章)へと、主題を横断しながら展開する。デレク・ジャーマン、グレイソン・ペリー、サラ・ルーカス、マイケル・クレイグ=マーティン、トレイシー・エミンらの作品は、DIY精神と強い物語性によって、ありふれた日常を様々な角度から照らし出している。



また、本展を読み解く鍵となるのが、各章のあいだに映像作品を紹介する「スポットライト」セクションだ。
例えば、ブラック・オーディオ・フィルム・コレクティヴの《ハンズワースの歌》(1986)は、1985年にバーミンガムのハンズワース地区で起きた暴動を契機に制作された映像詩で、ドキュメンタリーと実験映画の手法を重ね合わせ、英国に生きる黒人の経験と社会の緊張を多層的に伝える。

トレイシー・エミンの《なぜ私はダンサーにならなかったのか》(1995)では、海辺の町マーゲイトの風景に苦い記憶の告白が重なり、後半ではディスコ・ソングとともに踊り出す身体が、過去を乗り越える意志として立ち上がる。

スティーヴ・マックイーンの《熊》(1993)は、無音のモノクロ映像を遮光された空間と大スクリーンで提示し、観客を作品世界へと巻き込む装置を伴って、人種、欲望、暴力の境界を揺さぶっている。
さらに、コーネリア・パーカーの《コールド・ダーク・マター:爆発の分解イメージ》(1991)は、物置小屋を爆破した残骸を暗い空間に吊り下げ、「爆発の瞬間」を凍結させることで、破壊と創造の同居を可視化する。マーク・ウォリンジャーの《王国への入り口》(2000)は、空港の到着ゲートを「国境」として読み替え、帰属や国家という象徴の働きを浮かび上がらせた。





















