最後の展示室では、サラ・ファン・ライとダヴィット・ファン・デル・レーウの写真作品が展示されている。ふたりはアムステルダムとパリを拠点に活動するオランダ出身の写真家で、 パートナーであり、ユニットとしても個人としても活動している。2023年にはふたりの初の写真集『Metropolitan Melancholia』を出版。今年12月からは、サラ・ファン・ライにとって初となる美術館での個展をパリのヨーロッパ写真美術館で開催予定など、近年評価が高まるユニットだといえる。

ふたりは都市を歩き回りながら作品を制作する。そして新型コロナウイルスのパンデミックによる行動規制は、その制作を異なるかたちで進化させた。「Still Life(静物)」シリーズは、ロックダウン中の室内でガラス面に反転した映像や、壁に投影された影を利用して、チューリップやバラといった花々のイメージを拡張している。

また「Metropolitan Melanchoria(メトロポリタン・メランコリア)」 シリーズは、コロナ禍のニューヨークを舞台に撮られている。影やイメージの重なりを取り入れながら、都市の何気ない風景を映画の一場面のように切り取った。

本展は実質的に、ふたつの展覧会が併存している。このふたつをつなぎ合わせながら、オランダと千葉という県外においてはあまり知られていない歴史に焦点を当て、多面的なアプローチによってその重層性を導く試みといえるだろう。



















