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「オランダ×千葉 撮る、物語るーサラ・ファン・ライ&ダヴィット・ファン・デル・レーウ×清水裕貴」(千葉県立美術館)開幕レポート。知られざる千葉とオランダの関係を写真から紐解く【2/4ページ】

 まずは清水による展示空間を紹介したい。清水は千葉県生まれ。2007年、武蔵野美術大学映像学科卒業。2011年に第5回写真「1_WALL」グランプリを受賞、2016年に第18回三木淳賞を受賞した。小説では2018年、新潮社R18文学賞大賞受賞。土地の歴史や伝承のリサーチをベースにして、写真と言葉を組み合わせて風景を表現している。

展示風景より、左から清水裕貴《あなたはここにいない》(2022)、《学芸員K》(2025)

 本展の開催にあたって清水が着目したのは、江戸幕府最後の将軍・徳川慶喜の弟で、水戸藩の第11代藩主であった徳川昭武が残した多数の古写真や日誌などの記録だ。昭武はオランダ各所を訪れて見識を広げた経験を持ち、29歳で千葉の松戸にある戸定邸(重要文化財)に隠居すると多彩な趣味に熱中した。とくに写真には入れ込んでいたそうで、会場では、昭武が使用したカメラも展示されている。

展示風景より、徳川昭武が愛用していた1号パノラムコダック

 戸定邸に隣接する戸定歴史館には、昭武が残した膨大な写真や撮影の記録、日誌といった資料が残されている。清水は同館の「学芸員K」と対話しながら、昭武の足跡をたどっていったという。会場には、昭武の撮影した明治時代の写真とともに、清水の写した「学芸員K」や戸定邸の写真が並び、さらにこの学芸員Kと、清水と思わしきSが対話した記録であろうテキストが掲示される。

展示風景より、左から清水裕貴《学芸員K》《戸定邸》(ともに2025)

編集部