「GOOD DESIGN EXHIBITION 2025」(東京ミッドタウン)開幕レポート。はじめの一歩から広がった、持続するデザインの在り方にも注目【2/3ページ】

 主に「グッドデザイン大賞・金賞」「グッドデザイン・ベスト100」から気になったプロジェクトやその傾向を紹介したい。

 最高賞である「グッドデザイン大賞」(内閣総理大臣賞)に選ばれたのは、能登半島地震における仮設住宅の建設で、解体せずに恒久的に使い続けられる新たな仮設住宅のモデルを実現した、坂茂建築設計等による「DLT木造仮設住宅」だ。このプロジェクトに関する模型やパネルは中央の櫓で紹介されている。

 ウェブ版「美術手帖」では、珠洲市で実施された坂茂による「被災地支援プロジェクト」を昨年7月に現地取材している。当時の状況や建築の内部についての詳細レポートもあわせてご覧いただきたい。

東京ミッドタウン地下1階ホールA 展示風景より、グッドデザイン大賞を受賞した、坂茂建築設計+株式会社家元+株式会社長谷川萬治商店による仮設住宅「DLT木造仮設住宅」。効率的で安定した居住空間に加え、入居者が離れたくなくなるほどの快適さを実現した。簡素で劣悪になりがちな被災地の仮設住宅を、実際に利用する被災者の視点から設計した点が高く評価された

 金賞に選ばれたプロジェクトには、長年にわたって続けられてきた取り組みを新たな価値創造に活かしたものや、手に取った人々に豊かなコミュニケーションをもたらすもの、そして最新技術を取り入れながらも、人々がそれらとどのように向き合い、人間らしい感性や温もりを保ちながら共存していけるかを探るデザインなどが見受けられた。

 近年、AIを用いたプロダクトの応募が増加傾向にあるという。しかし、たんに新しい技術の導入に重きを置くだけでなく、その技術が我々の暮らしにどのような価値をもたらし、どのような調和を生み出すのかという点が、評価においてより重視されていると担当者は語っている。

東京ミッドタウン地下1階ホールA 展示風景より、金賞を受賞した株式会社豊島屋による「鳩サブレー 1枚入缶セット」は、創業130周年の記念としてつくられたもの。缶やボックスに演出された遊び心が手に取った人の楽しさを引き出し、伝統を活かし新たな価値創造に挑む姿勢、そしてユーモアあふれる体験設計が高く評価された
東京ミッドタウン地下1階ホールA 展示風景より、金賞を受賞したブルーミング中西株式会社によるハンカチーフ「クラシクス・ザ・スモールラグジュアリ」。色を言葉としてとらえた108色のハンカチは、気持ちを伝えるためのツールとしてデザインされている。贈る人と使う人のあいだに、従来の言葉に頼らない新たなコミュニケーションが生み出されることを意図している。品質の確かさはもちろんのこと、今年度のテーマならではの選出だと言える
東京ミッドタウン地下1階ホールA 展示風景より、こちらも金賞を受賞したエゾウィン株式会社によるウェブサービス「レポサク」。数十台の車両が同時に動く農業現場では、その動きは長年従事してきた人たちの熟練技によって受け継がれてきた。本サービスはその動きをリアルタイムで可視化し、次世代へ継承できる。高齢者でもUSBを挿すだけで使える分かりやすいUIが魅力で、担い手不足や高齢化といった課題への貢献も評価された

 ベスト100には、防災や医療現場など、自然災害リスクが高く、少子高齢化という社会課題に対応した日本ならではのデザインや、誰もが安心して暮らせる福祉のためのデザイン、さらに地域産業を新たなかたちで振興するためのシステムなど、課題に向き合った多彩なアイデアが数多く並んでいる。とくに、若年層を中心にライフスタイル化している「推し活文化」を既存の仕組みに取り入れたアイデアは、現代の消費行動やコミュニケーションの在り方を象徴するものとして選出されており、非常に印象的であった。

東京ミッドタウン地下1階ホールA 展示風景より、「cocoe 車いすマークホルダー」。ベビーカーやバギーを車いす代わりに使う方のための表示ホルダー。周囲の誤解を防ぎ、安心して外出できる環境を提供することができる
東京ミッドタウン地下1階ホールA 展示風景より、「ASKUL 大人用おむつ オリジナルシリーズ」。人手不足が深刻な介護施設で、おむつの種類が識別しやすいようデザインされている
東京ミッドタウン地下1階ホールA 展示風景より、「福岡市の屋台公募制度」。福岡市ならではの観光資源である「屋台」の風景を守るため、福岡市が「公募制度」を導入した事例
東京ミッドタウン地下1階ホールA 展示風景より、「推し活キャンセル保険 <国内遠征版・海外遠征版>」