「SIDE CORE Living road, Living space /生きている道、生きるための場所」(金沢21世紀美術館)開幕レポート。美術館のなかに「ストリート」を【8/8ページ】

 また、会期中は「Road to Noto」と題して、金沢21世紀美術館と石川県珠洲市を「道」でつなぐことをコンセプトとした地域連携型のアートプログラムも行われる。この「道」は、観客が能登を「知る」「訪れる」「関わる」ためのきっかけや経路そのものを意味しており、会期中、月に1〜2回を目安にSIDE CORE制作のオリジナルガイドブックを手に、スズレコードセンター、ラポルトすず、海浜あみだ湯、大谷地区などを巡るビジティングプログラムが行われる。

 多くの公立美術館は市民に向けて開かれた空間を志向するが、同時にある程度の閉鎖的な性格も作品の展示や保護の観点からは求められる。SIDE COREはこのジレンマと対峙し、ストリート・カルチャーの精神とその実践をもって、美術館の内部に異なる価値を生み出そうとしている。会場にはSIDE COREだけではく、ストリートの精神がつなげたアーティストたちの痕跡が散らばっている。本展を訪れた観客もまた、この痕跡をなぞるようにして、ストリートの一員に招かれる。何かが始まる予感が満ちているこの場所は、残り5ヶ月でどのように姿を変えるのか、楽しみでならない。

展示風景より、中庭の足場から見た金色のネズミ

編集部