震災やパンデミックといった社会の分断を経験するなかで、SIDE COREは「LIVING SPACE/生きるための場所」というコンセプトも見出した。その象徴的な作品が、SIDE COREと関わりの深いアーティスト・細野晃太朗による新作インスタレーション《唯今/I`M HOME》だ。

細野は1986年東京都生まれ。2013年にアートとファッション、音楽が交わるスペース「ANAGRA」を立ち上げ、2016年まで企画・運営を務めた。2021年には、アパートの一室をセルフリノベーションした完全予約制・住所非公開の芸術鑑賞室「HAITSU」を開設。現在は山梨県に拠点を移し、都市では実現しにくい鑑賞や展示のあり方を模索している。

細野は美術館の内部に小さなギャラリーを出現させた。ジャンルを横断する場をつくり続けてきた細野がセレクトした作家の作品は、ウェブサイトにアクセスすることで実際に購入することもできる。同時に細野は、この空間の目的を、作品の販売のみならず「アートを所有すること」「生活空間の中でアートを見ること」について考えることと位置づけている。

《唯今/I`M HOME》の向かいにある「ミニシアター『9』」では、世界各地のアーティストによる「路上映像作品」が上映されている。描かれては消えていく、街とともに変化し続けるストリートアートの特性を踏まえつつ、行為がいかに記録をされるのか、記録された映像はいかにして都市を映し出すのかを考える試みとなる。
このシアターに隣接するかたちで構築されたのが、SIDE COREのスタジオを再現したような作品空間 《end of the day》だ。壁面にしつらえられたカウンターから内部を覗くと、そこにはソファやモニターが置かれ、ZINEや書籍、写真集などが並んでいる。来場者は穴をくぐり抜けて中に入ることができ、思い思いの時間を過ごすことができる。


このように「LIVING SPACE/生きるための場所」は、どのような体験をするのか、来場者に任されている場だといえる。思い思いの時間を過ごすうちに、自分の居場所を見つけていく。そもそも生きるという行為は、そういう営みであったことを思い出させる。




















