福山エリア
福山エリアにも複数の会場が展開されている。臨済宗建仁寺派の特例地寺院である「天心山神勝寺(しんしょうじ)」もその舞台のひとつ。本建築祭の展示が行われる「無明院」は、最も高い丘の上に位置する神勝寺の本堂だ。無明院のピロティ空間に特設された会場では、「NEXT ARCHITECTURE|『建築』でつなぐ“新しい未来”」が開催されている。未来を担う5組の建築家が「海」「自然」「市民」「風景」「宇宙」の視点ごとに新たなヴィジョンを提示する試みとなっている。参加作家は、藤本壮介、石上純也、川島範久、VUILD/秋吉浩気、Clouds Architecture Office。

現在森美術館で個展が開催されている藤本は、「海」をテーマに提案する。会場では、最新作である瀬戸内海に浮かぶ「動く島」を構想した《海島プロジェクト》を紹介。あわせて、大小の球体構造体を立体的に組み合わせた超高層都市《共鳴都市 2025》も紹介されており、海に囲まれた瀬戸内という土地を生かした未来の姿を思わせる展示が展開されている。

「自然」をテーマに提案するのは、川島範久。川島は、地球環境危機にさらされた現代において、建築や都市のあり方を「資源」の視点から再構成する。本展では、神勝寺で集めた落ち葉や枝などを用いて、自然の循環のかなめに建築を組み込むことを試みる。神勝寺の敷地内に展開される2つの建築物は、離れたところに位置しているものの、ともに同じ循環サイクルをつくりだす装置となっている。

建築テック系スタートアップ・VUILDの代表である秋吉は、「市民」をテーマに提案を行う。秋吉は一貫して「テクノロジーの力で誰もがつくり手になれる世界」の構築を目指しており、その実現方法はユニークである。例えば「NESTING」というプラットフォームは、設計データから部材を最適配置で切り出し、運搬、施工までを一貫支援するもの。実際に能登半島地震の際には、被災者が解体材を再利用し、約1ヶ月で住宅を「セルフビルド」ならぬ、「コビルド」した。建築物すら自身の手でつくれるようになる世界を実現した先駆的な取り組みだと言えるだろう。
プリツカー賞受賞者といった世界で活躍する著名建築家たちの紹介だけでなく、これからの未来を担う次世代の建築家が紹介される本プログラムからは、企画側が本建築祭で「“新しい未来”像を探すきっかけ」をつくりだそうとする姿勢が見受けられる。必見のプログラムだ。



















