岡ともみは、日本全国において様々に存在していた、死にまつわる風習をテーマにした「サカサゴト」シリーズを展開した。日本の古来からの葬送の風習「逆さごと」に着目した岡。よく知られているものでは、死装束は襟を右ではなく左前にする、故人の枕元の屏風を上下を逆にする、といった風習があるが、岡はこのような「逆さごと」を現実をひっくり返すことで、異界とのつながりをつくる営みと読み解いた。

暗い展示室の柱や壁には、12の古い柱時計がかかっているが柱時計の針は「逆さ」に回転しており、振り子のあった部分には「逆さごと」の風習を解釈した映像が埋め込まれている。「死者が出た家の火を煮炊きに使わない」「使者の枕元に魂の拠り所として花を1本置く」といった12の風習が、時計のなかに刻まれた。現代における葬送のあり方の画一性に疑問を感じたという岡は、古来あったはずの多様な死への価値観を、いまいちど本作を通して提示している。




















