スクリプカリウ落合安奈は、5つのスライドプロジェクターが写真やテキストを次々に映し出す《ひかりのうつわ》を展示。落合はもうひとつの母国としてルーマニアを持つが、その隣のウクライナで戦争が始まったことを契機に、1年をかけルーマニアで撮影旅行を実施した。落合は季節のめぐりとともに土地の奥深くへと入り込み、やがてルーマニアの日常のなかの生と死を感じるようになったという。

落合は今回の旅が「自身にとって透明だった祖国に色を与えてくれた」と語る。血縁ではないが、まるで母や父のような多義的な存在が、本作の被写体になっている。それらは過ぎ去っていく情景として、映写機のスライドで次々に移り変わり、その記憶を留めるように詩が刺し挟まる。

映画監督、音楽家、小説家としても活躍する甫木元空は、2017年に母が余命宣告を受け、その母と祖父が暮らす高知に移住。母の残された時間、そして周囲の家族を撮ったシリーズ「〈窓外〉より」を制作した。

甫木元は宮本常一がハーフカメラで土地の民俗を記録したことを念頭に、家族の空間そのものをハーフカメラで記録。写真を2枚組にして、フィルムのあいだにある時間を物語的に組み込んだ「映画的」連作をつくりあげた。「母が亡くなっても、写真の向こうの景色は変わらず存在し、同じようにカメラを介してその景色とコミュニケーションできることを感じる」という甫木元。個人的な死の物語を、鑑賞者の周囲にある死の欠片と結びつけるシリーズとなっている。




















