寺田健人は、娘や妻が不在の「家族写真」のシリーズ「想像上の妻と娘にケーキを買って帰る」を展示している。女児向けの玩具や運動靴とともに、あるいは自宅の食卓やトイレ、洗面所といった生活空間で撮られた「セルフポートレイトの家族写真」は、寺田自身がゲイであるというアイデンティティと向き合いながら制作された。子供向けの玩具には女児に憧れていた寺田の幼少期の思いが込められているという。

「コロナ禍で『家族以外の面会』が制限されたことも、『家族』とは何かを問う本シリーズ制作の契機になった」と寺田は語る。よく見れば映り込んだ小物は買ってきたままの新品であり、また、撮影用のレリーズの紐が画面内に入り込んだりするなど、作品のイメージは虚構性が巧みに演出されている。家族とはなにか、制度とはなにかを、切実さとともに訴えかける。




















