最後となる第4章「サヴォアフェールが紡ぐ庭」は新館で展開。ヴァン クリーフ&アーペルに現代まで継承され続けている「サヴォアフェール(匠の技)」の数々を紹介する。

「ミステリーセット」は、ヴァンクリーフ&アーベルが1933年に特許を取得した技術だ。宝石に切り込みを入れ、作品に組み込まれた専用のレールに沿って滑り込ませることで、爪を見せずに定石を留めることができる。さらに、1936年には曲面にも対応するように改良された、会場では自然に発想を得た可憐なモチーフを表現するために、こうした技術が使われていることが紹介されている。

多用途性もヴァン クリーフ&アーペルが一貫して追求してきたことだ。ネックレスをブレスレットやクリップとしても着用できるジュエリーの多用途性も、数々のアクセサリーの展示を通して紹介される。

また、豊かな色彩表現に奥行きを与えるエナメルによる表現も重要な役割を担う。明るい輝きによって色彩の豊かさを際立たせたり、小さなステンドグラスのような透明感を与えるなど、細部に宿る美のために洗練されてきた技術だ。

西澤による会場設計の妙は、新館でも大いに発揮されている。視線を巧みに誘導するうねった壁面と、ゆるやかに変化していく会場の色調は、小さなアクセサリーたちをより物語的に見せることに貢献をしているといえるだろう。

数多の人々が憧れ、魅了されてきたヴァン クリーフ&アーペルのジュエリー。その根幹にあるアール・デコの思想を、同時代の建築のなかで体感するとともに、メゾンが育んできた技術の豊穣を思う存分に感じられる、かつてない展覧会となっている。



















