敏腕版元は蔦重だけじゃない!
大河ドラマでは脇役として登場するが、蔦重を取り巻く人物たちも名版元ばかりだ。同館2階には、浮世絵界を牽引してきた版元たちやその活動をともにした絵師たちによる浮世絵作品が展示されている。
例えば、ドラマの初期でも登場する「鱗形屋」は、初期の浮世絵版画界をリードしてきた、いわば老舗の名版元だ。明暦期(1655〜58)から江戸を拠点に活動を始めており、版本と一枚絵の両輪で出版を手がけてきた。刷りにおける色数の少なさも、浮世絵草創期の作品であることをうかがわせる。


鱗形屋の勢いが下火となった寛永期(1748〜51)に頭角を表してきたのが、「西村屋与八」だ。蔦重のライバルとしても登場する西村屋与八は、浮世絵師の鳥居清満とタッグを組み、大型絵「浮絵」の数々を手がけた。大型の紅摺絵《浮絵両国涼之図》の発表時には、画面左に「浮絵の紅摺絵の元祖である」といった旨が記されており、新興版元でありながらも意欲的な姿勢が垣間見える。

また、葛飾北斎によるかの有名な「冨嶽三十六景」シリーズは、三代目西村屋によるものだ。西村屋は風景画を主軸に置いてきた版元でもあり、代々受け継がれてきたその手腕が、ヒット作を生み出すための土壌となっていたことも知ることができるだろう。まさに「名絵師のもとに名版元あり」。浮世絵師と版元がいかに重要なパートナー関係にあったかを考えさせられる一作だ。
ほかにも同時期において重要なジャンルであった、美人画や役者絵をも西村屋は手がけており、同フロアの壁2面を使い切るほど、その仕事が多岐にわたっていたこともうかがえる。






















