同じく2階では、江戸の芝で活躍した「和泉屋市兵衛」と、名古屋の出版界を牽引した「永楽屋東四郎」を紹介している。
元禄期(1688〜1704)から出版活動を始めたとされる和泉屋市兵衛は、天明期(1781〜89)に一枚絵への参入を果たし、鳥文斎栄之や勝川春潮、渓斎英泉、歌川国貞らとともに美人画を手がけた。また、歌川豊国の出世作でもあるシリーズ作品「役者舞台之姿絵」を出版したのもこの版元だ。ほかにも、歌川国長や広重らと組んで風景画を発表するなど、手広く活動していたようだ。

北斎による代表作のひとつ『北斎漫画』が出版されたのは、意外にも名古屋を拠点とする版元・永楽屋東四郎だ。寛永3年(1791)より蔦屋重三郎とも提携し、江戸・名古屋間の販路を確保。二代目永楽屋によって『北斎漫画』初編が出版された。2編以降、その権利は江戸の角丸屋に移るものの、11編以降は再び出版を担当。最後の15編は明治11年(1878)に刊行されている。
永楽屋はその後も出版業を続けており、太平洋戦争で店舗が焼失したのち、昭和26年(1951)に約170年の活動を終了させた。





















