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海に浮かぶ唯一無二の宿「guntû」。極上の船旅を約束するこだわりとは?【8/9ページ】

 ゆっくりとした時間を過ごすために設けられたスペースのなかで、guntûならではの雰囲気を感じられる場所のひとつと言えるのは「縁側」だろう。船の上に縁側があるというのは珍しく感じられるが、長く続くそのスペースでは不思議とリラックスすることができ、本を読んだり寝転んだりと、思い思いの過ごし方ができる。お寺の縁側をイメージしており、本来庭に広がるはずの枯山水の代わりに、本物の水である海を見せる設計は、日本文化への敬意を感じるとともに、guntûにしかできないことのようで興味深い。

船内風景より、縁側の様子。

 guntûの特徴である屋根は、先を少し曲げることで外から光を取り込む工夫がされている。天井から吊るされる人工的な光ではなく、できるだけ自然光を生かすつくりとなっている部分にも、船内の心地よい雰囲気をつくり出すための意匠を感じる。ロゴマークとなっている「guntû」のuは船体をイメージしており、その上につけられた「^」はこの屋根から着想を得ている。

 そして、18席の椅子が置かれているラウンジでは、瀬戸内に関する歴史書や写真集を閲覧することができる。また空間内の中央にかけられた掛け軸は、季節や航路にあわせてかけ変えられる。

船内風景より、ラウンジの様子。
船内風景より、ラウンジの様子。
船内風景より、ラウンジにかけられた掛け軸。大阪航路にあわせて選ばれた12代目堀内宗完のもの。

 guntû全エリアに共通する特徴的なつくりは、木材を使用していることだろう。船に木材を使用することは、火事などの危険性の観点から大変ハードルが高くなっている。本来、不燃加工された木材として使用許可がおりている4種類の木材しか使用できないはずだったが、コンセプトを体現する滋味深い美しさを求めた結果、堀部は新たに7種類の木材の使用許可を取り、合計11種類の木材で船体をつくりあげた。

 guntûを実現するために様々な課題が生じたが、なんと構想からわずか2年足らずで完成させている。建造を担当した常石造船の長年培ってきた船に対する豊富な知識と経験が、この短期間での実現を叶えた大きな理由のひとつであることは間違いない。

船内風景より、ラウンジの様子。11種類の木材が使われた船内は、木の温もりに包まれるような空間となっている。