本作品は2部構成となっている。第1部は、電車に乗って美術館にきたある母子の話。主人公である迷子になった男の子の、絵画との不思議な出会いが描かれる。第2部「西洋美術館クロニクル」は、大人の読者に向けたエピローグとして楽しめる、数年後の未来を舞台にした物語。東の国に西洋絵画を展示する美術館が生まれるまでの歴史を、ファンタジーと現実を混ぜながら詩的な表現で展開される。
雰囲気の異なる2部で構成される本作品は、時期を変えて1部ずつ読んだり、2部通して多層的に作品の世界観に浸ったりと、さまざまな方法で楽しんでもらいたい、という思いからこの構成になったという。たんに子供向けの絵本とするのではなく、大人も楽しめる工夫がされた本作品には、年代問わず、美術館で絵画と向き合う素晴らしさに気づいてほしいという思いが込められている。
本作の制作過程で、作者である梨木に同館内の紹介を行った渡辺晋輔(三菱一号館美術館学芸グループ⻑、前・国立⻄洋美術館学芸課⻑)は、本作品の出版に際して次のように語る。
「よく絵は窓とも形容されるが、実際の窓の外の景色とは違いそれ自体は動かないため、見る側が想像力を持って向き合わないと作品世界に参加することはできない。しかし想像力を持って向き合うことで、「本当に自分にとって大切なものを見つける」という、非日常の素晴らしい体験をすることができる。そのなかで抱く感情や考えに正解はないので、ぜひ素直な気持ちで絵と向き合ってみてほしい。また絵本のなかには国立西洋美術館の収蔵品をモチーフにした絵ががいくつも登場しているので、どの作品か探しながら楽しんでみてほしい」。

なお本作品は、8月5日より国立西洋美術館ミュージアムショップで先行販売(同館限定表紙の絵本を特別販売)、8月20日からは全国の一般書店でも販売される。

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