「野口哲哉 鎧を着て見る夢 –ARMOURED DREAMER–」(箱根彫刻の森美術館)開幕レポート。鎧のなかにある身体が問いかける人間の在り処【3/4ページ】

 中2階に上がった展示室では、森をイメージしたという高さが異なる複数の柱状の什器に野口の小作品が乗せられており、またガラスの向こうには井上武吉の屋外作品《my sky hole 94-6 森のラビラント》(1994)を望むことができる。

展示風景より

 什器の上の作品の中でも、うつむいて悲嘆にくれる鎧の人物像《STRIPE》(2018)にとくに注目したい。これは、野口が読んだという戦国時代の武士の手記にあった「討ち取られ首を失った死骸の鎧の意匠をみて、それが友人だとわかり、そばで悲嘆にくれた」といったエピソードをもとに制作した作品だ。装飾的な鎧の意匠が人間を識別するためにも機能していたという驚きから制作されたという本作は、野口の鎧と人間のアイデンティティについての思索がうかがえる。

展示風景より、中央が《STRIPE》(2018)