1階展示室は屋外の庭園とそのままつながっているような大型のガラスが特徴の空間だ。会場の入口付近には野口の新作《floating man》(2025)が展示されており、鎧をまとった人物が優雅に泳ぐ姿が表現されている。ガラスの向こうに見える山の稜線や緑の芝を借景に、まるで広大な美術館の敷地を鎧が自由に泳ぎまわるような印象を与える本作は、展示空間に実際の大きさ以上の拡がりを与えている。

外光が入ってくるこの展示室では、《ENARGY KNOT》(2025)や《Energy Notch》(2023)といった平面作品の、兜や鎧に使われている蛍光色が鮮やかに発色することも見逃せない。実用的な武具でありながら、同時に過剰なまでの装飾を与えられた鎧という存在に宿る、美意識の在処を問いかけてくるようだ。

パネルを組み合わせて設置された、会場内の小部屋も興味を引く試みだ。内部には外の窓ガラスに向かって長方形に窓があけられており、まるで雪見障子から庭を眺めるかのような体験ができる。窓の手前では野口の小作品たちが思い思いの時間を過ごしており、鑑賞しつつ作品とともに思索にふけるのも良いだろう。

また、この展示室では野口の制作風景を記録したドキュメンタリー映像も見ることができる。レジン製の鎧に繊細な文様を施している作業の様子を、精細な映像で鑑賞することが可能だ。



















