第3章「道釈画と故事人物画」は、道教や仏教に関連する仙人、羅漢、観音を描いた道釈画と、中国や日本で親しまれてきた故事を題材にした画を紹介している。
著名な禅僧を描いた禅機図としては、国宝の、因陀羅筆・楚石梵琦題詩の《禅機図断簡 智常禅師図》(14世紀、元時代)に注目したい。唐代の高僧・帰宗智常に張水部が教えを請うという場面を描いたもので、指をさしながら不敵な笑みを浮かべる智常の表情に、超越性が表れている。また、竹や石の壁に多くの詩を書いたという寒山を描いた重要文化財の虎巌浄状賛《寒山図》(13〜14世紀、元時代)も、そのぼさぼさの髪の毛などから世俗を離れた高僧の姿が見て取れる。

狩野常信の《琴棋書画図屛風》(17〜18世紀、江戸時代)は、中国の賢人たちを描いた屛風だ。琴棋書画とは中国の知識人たちが身につけるべきとされた琴、囲碁、書、画のことで、本作ではこれらの教養を楽しむ人々の姿が、理想的なかたちで描かれている。

本展は静嘉堂文庫のコレクションにありながらも、これまであまり展示されてこなかった銘品を改めて見つめ直すことも企図されたものだという。親子や友人と訪れて、神仏や人物を描いた古美術の魅力にぜひ触れてみてはいかがだろうか。



















