第1章「やまと絵と高貴な人の姿」では、天皇や貴族といった身分の高い人々を描くときに、どのようなルールがあったのかを紹介している。
例えば、人物の顔を描くときの引目鉤鼻(目を細い線で、鼻はくの字で表す)は、貴族をはじめとした高貴な人を描くことに使われた。姫と貴族の青年が結ばれる『住吉物語』を絵巻にした《住吉物語絵巻》(16〜17世紀)でも、貴族たちの顔がみなこの様式で描かれていることがよくわかる。

天皇の表象も工夫がこらされていた。本来、天皇の姿は直接描かないことがルールではあり、平安時代の宮中の年中行事を描いた江戸時代の《大内図屛風》(18世紀)の後期展示(8月13日〜)の左隻では、竹の葉で顔が隠されており、このルールに則られていることがわかる。しかし、前期展示(〜8月11日)の右隻では、例外的に天皇の顔がはっきりと描かれている。これは建物の壁や屋根を省略し、室内の様子を描いた「吹抜屋台」だからだ。実際にあるものを省略するという、絵画表現におけるフィクションであるため、天皇の顔を描くことが許されていると考えられている。




















