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安野貴博が矢作学と見る「マシン・ラブ:ビデオゲーム、AIと現代アート」展【2/7ページ】

アセットが広げる世界

安野 本展で僕がまず注目したのは、佐藤瞭太郎さんの映像作品《アウトレット》(2025)です。

矢作 安部公房をはじめとする小説に影響を受けたもので、異なる文脈を持つアセットのキャラクターたちが、現実とは異なるルールでつくられたゲーム世界のなかを生きる、キャラクターアセットたちの姿を描く作品ですね。

展示風景より、佐藤瞭太郎《アウトレット》

安野 ウェブ上には「アセット(=資産)」と呼ばれる人やモノの3Dデータが、膨大に蓄積されています。このアセットを売り買いし、使用することによってゲームを制作したり、メタバース空間で使用することができます。だから、インディー・ゲーム(少人数で制作されたゲーム)をプレイすると「このモデル、別のゲームで見たな」といったことが起こるわけですね。

 この《アウトレット》がおもしろいと思ったのは、多種多様なアセットが作中に登場し、普通の世界では絶対に有り得ない、ゲームエンジンの物理演算による動きが非常に効果的に使われていて、それがすごく美しく感じられたんですよね。安部公房の小説に影響を受けたというのも頷ける、不条理な美しさが宿っています。

矢作 そうですね。動きのみで鑑賞者とコミュニケーションしているような印象も受けるので、言葉の壁を取り払って様々な国の人々に訴えるものがあるのではないかと思っています。

編集部