「岡﨑乾二郎 而今而後 ジコンジゴ Time Unfolding Here」(東京都現代美術館)開幕レポート。「転回」の先に見えたその造形の到達点【3/7ページ】

 岡﨑の作品はその後、非常に長い、まるで散文や詩のようなタイトルをつけるようになっていくが、そこには「あかさかみつけ」シリーズと同様の、鑑賞者を介して作品とタイトルのあいだで意識を往還させようとする意識が感じられる。本展冒頭に並んだ「あかさかみつけ」シリーズは、岡﨑作品の一筋縄ではいかない重層性を示すとともに、そこに挑む態度を鑑賞者に意識づける。

展示風景より、左が《おかちまち7》(1987)

 金属を用いた大型立体作品《Blue Slope》《Yellow Slope》は、ベルギー・ゲントで開催された「ユーロパリア'89 現代日本美術展」(1989)に出展されたものだ。その造形は「あかさかみつけ」シリーズから抽出されているが、大きさも素材も異なっている。サイズが大きくなり、明確な金属の質感を帯びた本作と「あかさかみつけ」シリーズ、その造形のどこに連続性を我々は感じるのか。また、どこに差異を見出すのか。岡﨑の造形に対する問題意識に付き合ってみたい。

展示風景より、《Blue Slope》(1989)

編集部