同展のタイトル「evala 現われる場 消滅する像」は、視覚的な情報を極限まで削ぎ落としたサウンドインスタレーションを展開するevalaの活動を端的に表していると言える。
「以前作品を発表した現場にアンケートボックスを設置したところ、(ビジュアルはないのにもかかわらず)視覚的な感想が多かった」とevala。ある人は音によって移り変わる風景を連想し、またある人は音から色を認識しており、evalaのサウンドインスタレーションは共感覚を引き起こすトリガーにもなっているようだ。
また、evalaの作品が発する音は、現実で聞いたことがあるような音もあるのだが、その音が聞こえる環境はまるで鑑賞者のいる空間を包み込むようなものであり、どこか現実離れしているようにも感じる。2019年の「聴象発景」のインタビュー映像でevalaは、自身のサウンドが持つ要素について「超現実」「ニュー・リアリティ」という言葉を用いて表現するが、現実のようで現実ではない、夢を見ているような鑑賞体験を説明するのであれば、そう表現することもできるのかもしれない。
会場には、今回撮影が叶わなかった新作の大型サウンドインスタレーション《ebb tide》(2024)や《Inter-Scape “slit”》(2024)、《Embryo》(2024)も発表されているほか、「See by Your Ears」シリーズの原点となった《大きな耳をもったキツネ》(2013)、《Our Muse》(2014)も無音室で鑑賞することが可能となっている(無音室は予約制)。
さらに、evalaのこれまでの活動を振り返ることができる資料展示や、会場外の壁面には、サウンド・アートの歴史をまとめた「evala×ICC×サウンド・アート年表」も掲示されている。メディアアートやサウンド・アートを取り上げてきたICCならではの視点を借りながら、サウンド・アートの潮流や現在地を俯瞰して見てみるのも面白いだろう。
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