二之丸御殿の北側に造営された回遊式大名庭園「二之丸庭園」には名古屋出身の歌人/詩人の千種創一と、短歌集の出版なども行う書店「ON READING」が協働した作品《the Garden》が広がる。
本作は二之丸庭園の回遊式庭園の特性を活かした作品となっており、各所に千種による13首の短歌が鏡に印字されて散りばめられている。鏡には周囲の風景とそれを読む鑑賞者の姿が重なることで、作者としての「わたし」と読み手としての「わたし」の関係が相対化される。紙の上とはまた異なる、庭園という環境のなかで短歌を読む体験を堪能してほしい。
また、二の丸茶亭では、十二代尾張藩主・徳川斉荘(なりたか)が知多半島を視察した際にまとめた『知多の枝折』に呼応するように、千種が実際に同じ旅路をたどり詠んだ返歌が映像作品《知多廻行録》として展示されている。
名古屋城を「観光」という観点から照射する今回の「アートサイト名古屋城」。会期中には、夕暮れから夜間にかけて賑わう3日間の限定イベント「ナイトミュージアム名古屋城」(12月6日・7日・8日)も開催され、3つのトークプログラム(「蓑虫山人と猿猴庵のあるくみるきくをたどるたび」「樹木医から診る名古屋城のカヤの木 2024」「山下陽光のおもしろ金儲け大学」)や3つのパフォーマンス(「尾張名古屋のカワラモノ音楽」「川村亘平斎の影絵と音楽」「SOUND OF AIR 精油蒸留の実演」)、リトルマーケットなどを楽しむことができる。名古屋城の魅力を味わい、新たな魅力に遭遇してほしい。