• HOME
  • MAGAZINE
  • NEWS
  • REPORT
  • 「モネ 睡蓮のとき」展(国立西洋美術館)開幕レポート。モネ晩…

「モネ 睡蓮のとき」展(国立西洋美術館)開幕レポート。モネ晩年の芸術の極致へ【4/4ページ】

第4章「交響する色彩」

 第4章「交響する色彩」では、大装飾画の制作と並行して描かれた小型の連作群が展示されている。これらの作品には、睡蓮の池にかかる日本風の太鼓橋や、バラの咲くジヴェルニーの庭が描かれており、モネ晩年の実験精神が色濃く反映された大胆な筆遣いや鮮やかな色彩が特徴的だ。とくにこれらの作品は、モネの抽象的な表現への挑戦を示しており、その晩年の芸術的探求の幅広さを感じさせる。

第4章の展示風景より
第4章の展示風景より
第4章の展示風景より

エピローグ「さかさまの世界」

 本展のエピローグ「さかさまの世界」は、しだれ柳を描いた2点の睡蓮の作品で締めくくられる。これらの作品は、第一次世界大戦中に制作されたもので、しだれ柳の垂れ下がり、涙を流すような姿は悲しみの象徴とも解釈されている。この作品群を通じて、モネが戦争という時代背景のなかでどのように創作を続けたのかを感じ取ると同時に、彼が西洋の伝統的な遠近法や視点に挑戦し、新たな表現を生み出していった過程をも垣間見ることができるだろう。

エピローグの展示風景より、左から《枝垂れ柳と睡蓮の池》《睡蓮》(いずれも1916-19頃)

 晩年に至るにつれ、モネの芸術はより抽象的で内面的な表現へと変容していった。その新たな空間のとらえ方により、モネは印象派を超え、20世紀後半の抽象画家たちに多大な影響を与える存在となった。モネが晩年に精力的に追求した「睡蓮」の世界を多様な角度からとらえ、その芸術的進化を浮き彫りにする本展をぜひ会場で堪能してほしい。

編集部

Exhibition Ranking