第2章「琳派の世界」では、俵屋宗達、酒井抱一、鈴木其一といった琳派の名品が並ぶ。
伝俵屋宗達《槙楓図》(江戸時代)のやわらかく曲がった槙の幹のデザイン的な表現は、琳派らしさを強く感じさせる。その隣に並ぶ酒井抱一《秋草鶉図》(江戸時代)は、月やススキを配した大胆な構図のなかに、写実にもとづいた躍動感あふれるウズラが配置される。こうした、意匠的な構図の妙と、写実的表現との同居は、まさに第1章で見てきた平八郎の作品とも通じるものがある。
鈴木其一となると、構図の妙と写実がより融合しているかのような印象を受ける。《牡丹図》(1851、嘉永4年)は、其一らしい緻密な描写を積み重ねたことで、牡丹の花弁たちの迫力がより強調された印象深い作品だ。