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特別展「石岡瑛子 I デザイン」(兵庫県立美術館)開幕レポート。いま、現代を生きる石岡瑛子の仕事を見る【6/6ページ】

 「5幕|地球のすべてが私のスタジオ ―I(アイ)デザインは境界も時代も超える―」では80年代以降、映画などにも広がり始めた石岡の仕事を見る。

 ジャズ界の巨匠、マイルス・デイヴィスのアルバム『TUTU』のアートワークは、ニューヨーク近代美術館に永久保存されている、石岡の仕事を代表するもののひとつだ。マイルス、写真家のアーヴィング・ペン、そして石岡によるセッションのようなグルーヴによってたどり着いた、「ファラオのマスク」を体現したジャケットは、いまも見る者に強い印象を残す。

展示風景より、マイルス・デイヴィスのアルバム『TUTU』のアートワーク

 また、当時知名度が低かったタマラ・ド・レンピッカを広く知らしめることになる画集や、ナチスへの協力を経て戦後も映像作家として活動したレニ・リーフェンシュタールの個展の仕事など、石岡は表現者の人生と向き合いながら、それを具現化させる仕事を続けていった。

展示風景より、「映像の肉体と意志──レニ・リーフェンシュタール展」のポスターや図録

 その後も、石岡はフランシス・フォード・コッポラ監督『ドラキュラ』の衣装デザインで、第65回アカデミー賞を受賞するなど、映画をはじめとした視覚芸術の仕事に重きを置くようになる。会場では、コッポラが石岡の才能に注目するきっかけとなった、『地獄の黙示録』の日本版ポスターなどが展示されている。

展示風景より、フランシス・フォード・コッポラ監督『地獄の黙示録』の日本版ポスター

 石岡瑛子の仕事ひとつひとつを、成果物から丁寧に見る展覧会だ。クライアントワークにおいて、その溢れんばかりの「自分」を発揮し、世界に自身の存在を認めさせていった石岡のものづくりの姿勢。そこから現代人が学ぶことは多いのではないだろうか。

編集部

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