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特別展「吟遊詩人の世界」(国立民族学博物館)開幕レポート。詩をつくること、歌うこと、その現代につながる可能性【4/4ページ】

  2階の展示室には「ポピュラー音楽と吟遊詩人」のセクションが設けられている。近年、ポピュラー音楽やグローバルな消費社会、保護運動などとの関わりにより形式が柔軟に変化する吟遊詩人を紹介。

展示風景より、「ポピュラー音楽と吟遊詩人」のセクション入口

 世界でツアーを行うようになっているエチオピアのアズマリ、西アフリカのグリオたちの技法を活かすポップソング、保存運動を経て戦略的にグローバルな音楽市場に入り込むタール砂漠の芸能集団、そして伝統的な歌唱法を取り入れた現代モンゴルのラッパーたちの世界への広がりなど、いまも現在進行系で進んでいる吟遊詩人たちの新たなあり方を知ることができる。

 「韻と抑揚、イメージの深淵」のセクションは、来場者がカード遊びを通して日本語の韻の初歩を理解したり、詩作に取り組むことができる体験スペースだ。

展示風景より、「韻と抑揚、イメージの深淵」のセクション

 そして本展の最後における興味深い試みは「研究者のまなざし」のコーナーだ。研究者たちがどのようなアプローチによって現地の吟遊詩人とつながり、対象をまなざしているのか、そして対象からまなざされているのかを写真、動画、イラストを通して考える。

展示風景より、「研究者のまなざし」のセクション

 川瀬による人類学においての映像記録の考え方についての思索や、南による34年前のネパールでの記録と現在の記録の比較と考察、広瀬による現代において瞽女文化に着目することの意味についての思考、岡田によるバウルになった日本人女性との縁の記録やポトゥアの今日的な変化など、研究者たちもまた当事者となって本展に参加することで、来場者にも問いかけていく。

展示風景より、「研究者のまなざし」のセクション

 なお、会期中は会場1階の中央で、様々な吟遊詩人たちのパフォーマンスを鑑賞できる催しも開催。さらに地域やパフォーマンスの様式を超越したジャムセッションも予定されているほか、映画上映やセミナーなども実施。詳細はウェブサイトを確認してほしい。

 現代は多くの人が様々な場所で音楽や音声配信を聴き、また詩や短歌の創作が人気を集める時代だ。詩をつくり、唄い、それを共有するとき、人々のなかに生まれているものは何なのか。世界の吟遊詩人の現在と未来を考えつつ、詩吟という文化が我々に与えている影響を考えることができる展覧会だ。

展示風景より、志人の詩の展示

編集部

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