「GO FOR KOGEI 2024」開幕レポート。可視化される生活のなかの表現、表現のなかの生活【3/5ページ】

岩瀬エリア

 富山駅から車で約15分、かつて北前船の寄港地として栄えた歴史ある街並みが残る岩瀬エリアでは、サイトスペシフィックかつコンセプチュアルな工芸作品が展開されている。

岩瀬地区の街並み

 富山港を一望できる展望台下の広場では、松山智一が作品を展示。ニューヨーク・ブルックリンを拠点に長く活動している松山は、日本という国を俯瞰して見ることが多くなっていたという。しかし今年1月、松山は飛騨高山の実家に帰省中に震災に遭遇。自然の大きな力に神を見出し、相対する日本のものづくりの姿勢と、それが自身のDNAのなかにあるということを改めて意識したそうだ。

展示風景より、松⼭智⼀《ホイールズ・オブ・フォーチュン》(2020)

 松山はかつて明治神宮で展示したこともあるシカの角と車輪を組み合わせた彫刻を展示するともに、JR貨物のコンテナのなかにライトボックスで光る新作絵画を制作。日本人の精神性とそこに宿る強さを表現した。

展示風景より、松⼭智⼀《All is Well Blue》(2024)

 展望台の入口付近ではタイの少数民族出身のサリーナー・サッタポンが作品を制作。工事現場で使われる仮設足場は住む場所を追われた人々の仮住まいを表し、そこにかけられたカラフルな持ち運びバッグは所在のなさとともに、心の拠り所となる持ち物の存在も示唆している。

展示風景より、サリーナー・サッタポン《バレン(シアガ)アイビロング:富⼭》(2024)

 サッタポンは会期中の土曜日に、このバッグを持って街中を練り歩くパフォーマンスを実施。所在のなさと移動することで生まれる希望を街を訪れた人々に印象づける。

サリーナー・サッタポン《バレン(シアガ)アイビロング:富⼭》(2024)パフォーマンス

編集部

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