続く第3章「ありのままでいたい」は、「きれいになりたい」とは異なる欲望として、自分自身を肯定し、認めてもらいたいという願いを反映したセクション。例えば、1990年代に下着を表に出すスタイルを打ち出したグッチやプラダの衣服、ありのままでいながらも個性を表現するデザインをつくり出したヘルムート・ラングの作品などを楽しむことができる。
同章では、ヴォルフガング・ティルマンスの写真インスタレーション《Kyoto Installation 1988-1999》(2000)も紹介。1999年に同館がKCIとコラボレーションした展覧会「身体の夢」にも出展され、後に同館のコレクションになったこの作品では、80年代から90年代にかけての若者文化やゲイカルチャー、クラブカルチャーなど、当時のアイデンティティや身体に対する不安が表現されており、「ありのままでいたい」というテーマに深く共鳴している。
また、この章では「私を巡る問い」として、松川朋奈の絵画作品も展示されている。これらの作品は、松川が様々な女性へのインタビューに基づいて描いたもの。そのなかで写真を撮ったり話を聞いたりしながら、彼女たちが現代社会で直面している問題や違和感を拾い上げ、それをモチーフとして作品に取り入れている。
第4章「自由になりたい」は、コム デ ギャルソン(川久保玲)の衣装とヴァージニア・ウルフの小説『オルランド』によって構成。ウルフの『オルランド』は、川久保が2020年春夏コレクションで発表した衣装のモチーフでもあり、初めに男性服、次に女性服のコレクションが発表された。そして、その3作目としては、ウィーン国立歌劇場で2019年に初演されたオペラ『オーランド』のために川久保がデザインした舞台衣装だ。このオペラの内容を抜粋した映像は会場でも紹介されている。