日本初のアート出版に特化したブックフェア「TOKYO ART BOOK FAIR(以下、TABF)」が今年も東京都現代美術館でスタートした。国内外から約200組の出版社、ギャラリー、アーティストらが参加し、多彩なコンテンツが集結した会場の様子をレポートする。会期は10月30日まで。
今回注目したいのは、ひとつの国や地域に焦点を当て出版文化を紹介する企画「Guest Country」だ。6回目の開催となる今回は「フランス」に焦点を当てる。
フランスのファッションブランド、アニエス ベーのブースでは、アニエス ベーが発行し、世界中で無償配布されているアート紙『ポワンディロニー』のアーカイブが展示されている。1997年にアニエス ベーと現代アーティストのクリスチャン・ボルタンスキー、現代美術キュレーターのハンス=ウリッヒ・オブリストの会話がきっかけで始まった同誌。その魅力は、担当アーティストによって毎号印象が変わる自由度の高さだ。
会場を進むと、セーヌ川沿いの「ブキニスト」を模した什器に専門書が並ぶエリアが出現。まるでパリの風景を連想させるような演出だ。また、TABF初の取り組みとして、フランスと日本の絵本を自由に読むことができる子供向けコンテンツのエリアも登場。会期中には親子で参加できるワークショップも企画されている。
今回、会場では3つの展示ブースも設置されている。ひとつめは資生堂による「『花椿』資生堂創業150周年記念号 Special Exhibition」だ。『花椿』記念号の配布に加えて、資生堂が1932年頃に制作していた購入者特典「現代化粧百態繪端書」をインスピレーションに、資生堂のヘアメイクアップアーティストが現代風に再解釈したビジュアルも展示。「現代化粧百態繪端書」の現物も展示されているため、比べてみるのも面白いだろう。
地下1階「ボッテガ・ヴェネタ」のブースでは、ボッテガ・ヴェネタのカスタマー登録を行うことで「WINTER 22」のビジュアルクリエイティブをまとめたフォトブックを手に入れることができる。また、ボッテガ・ヴェネタが選書したアートブックも展示されている。
ミュージアムショップ奥のスペースでは、昨今アートブックシーンで注目されている「リソグラフ」を取り上げた企画「リソグラフ特別企画:Risopioneers」も開催されている。リソグラフとは、理想科学工業株式会社が開発した印刷技法。レトロな風合いや色の組み合わせの自由度の高さが、多くのクリエイターを魅了しているという。会場ではノルウェーとオランダのスタジオを取り上げ、その多彩な表現を可能とするリソグラフの魅力が紹介されている。
同じ場所では、理想科学工業株式会社(1946年創業時は謄写印刷業)によるリソグラフを用いたリソグラフの開発の歴史をたどる展示も見ることができる。
ほかにも、トークショーやワークショップ、作家によるサイン会などの様々なイベントも実施されるなど、本という媒体を通じて、リアルイベントの感度の高さを実感できる「TOKYO ART BOOK FAIR 2022」。今週末、ぜひ足を運んでみてはいかがだろうか。