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デイヴィッド・リンチの自伝から、鷲田めるろの活動記録集まで。『美術手帖』2月号新着ブックリスト(2)

新着のアート&カルチャー本の中から毎月、注目の図録やエッセイ、写真集など、様々な書籍を取り上げる、雑誌『美術手帖』の「BOOK」コーナー。金沢21世紀美術館に長らく勤めたキュレーター・鷲田めるろの活動記録集や、話題を集めたデイヴィッド・リンチによる自伝待望の邦訳など、新刊を3冊ずつ2回にわたり紹介する。

評=中島水緒(美術批評)+岡俊一郎(美術史研究)

キュレーターズノート 二〇〇七-二〇二〇

 金沢21世紀美術館に長らく勤めていたキュレーターの著者が、自身の関わった展覧会やアート・プロジェクトを書き記した活動記録集。「第57回ヴェネチア・ビエンナーレ」「3.11以後の建築」展など著者の代表的な仕事の裏舞台が語られるほか、美術と建築の交流の場を目指して設立された建築家集団CAAKとの協働、印象に残った作家たちの展示についての短評などが収録されている。「ともに展覧会やプロジェクトをつくる伴走者」として、作品、作家、観賞者や地元の人々に寄り添う姿勢が印象的だ。(中島)

『キュレーターズノート 二〇〇七-二〇二〇』
鷲田めるろ=著
美学出版|1800円+税
 

素が出るワークショップ 人とまちへの視点を変える22のメソッド

 美術館、まちづくり、介護・福祉からコミュニティ・デザインまで。様々な領域でワークショップの運営に携わる専門家たちが、長年の経験のなかで培ってきたワークショップの技法と具体的な事例を紹介。いまやあらゆる現場で様々なタイプのワークショップが実践されているが、異なる分野の知見が共有される機会は意外と少ない。だからこそ、本書のような守備範囲の広い事例集には教わるところが多いはずだ。とりわけ、参加者の「素」の引き出し方、体験の共有の度合いを高める手法などが参考になる。(中島)

饗庭伸、青木彬、角尾宣信=編著
学芸出版社|2500円+税
 

夢みる部屋

 映画制作だけでなく、画家、ミュージシャン、俳優など多彩な顔を持つデイヴィッド・リンチ。2018年の刊行以降、世界中で話題となってきた自伝がついに邦訳された。驚くのは、本書がリンチ本人による回想だけでなく、元妻、家族、友人、仕事の同僚といった関係者による「証言」をも収録したことだ。本書には、映画のカメラのように人生のすべての出来事を様々な角度からあますことなく記録し尽くさんとする底なしの熱量がある。作家のインスピレーションの源を読み解く鍵が仕込まれた異色の自伝。(中島)

デイヴィッド・リンチ、 クリスティン・マッケナ=著
山形浩生=訳
フィルムアート社|4500円+税

『美術手帖』2021年2月号「BOOK」より)

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