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2021.3.25

アメリカ最大級の映画博物館「アカデミー映画博物館」。常設展の詳細が明らかに

映画制作にまつわる芸術、科学、そしてアーティストたちに捧げられたアメリカ最大級の映画博物館「アカデミー映画博物館」。その常設展「映画の物語」やオープニング記念企画展となる宮崎駿のアメリカ初の回顧展「Hayao Miyazaki」の詳細が明らかにされた。

アカデミー映画博物館の外観 Photo by Josh White, JW Pictures / (C) Academy Museum Foundation
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 アカデミー賞を主催するアメリカの映画芸術科学アカデミーが9月30日にロサンゼルスにオープンさせる「アカデミー映画博物館」。そのオープニング展の詳細が発表された。

 同館は、映画制作にまつわる芸術、科学、そしてアーティストたちに捧げられたアメリカ最大級の施設。プリツカー賞受賞建築家のレンゾ・ピアノがデザインした建物には、4600平米を超える展示スペースが備えられており、「映画の物語」と題した映画の歴史に関する没入型常設展や企画展など様々なプログラムが行われる。

アカデミー映画博物館、サバン・ビル Photo by Josh White, JW Pictures / (C) Academy Museum Foundation

 1939年築のストリームライン・モダン様式のサバン・ビルのグランド・ロビーには、スピルバーグ・ファミリー・ギャラリーが設置。ガラスで覆われたこの入場無料のギャラリーでは、映画の歴史を紹介する10分間のビデオに加え、世界中の映画700本以上が天井から吊るされた10台のモニターで上映される。

スピルバーグ・ファミリー・ギャラリー (C) Academy Museum Foundation / Image by WHY Architecture

 この先に進むと、3階にわたる常設展「映画の物語」が始まる。2階のワンダ・ギャラリーでは、『市民ケーン』や『リアル・ウイメン・ハブ・カーヴス』、編集技師のセルマ・スクーンメーカー、俳優のブルース・リーなど重要な映画と制作者を6つのビネットで紹介する。

『市民ケーン』のビネット (C) Academy Museum Foundation / Image by WHY Architecture

 次のふたつのギャラリーは、アカデミー賞の歴史を振り返るものとなる。サバン・ビルの金色の円柱のなかにあるギャラリーでは20体の歴代のオスカー像を展示し、次の大きなギャラリーでは、1927年から現在までのアカデミー賞の歴史が時系列で紹介される。

オスカー像のギャラリー (C) Academy Museum Foundation / Image by WHY Architecture

 展示では、称賛するだけでなく、アカデミーと映画産業の負の歴史についても触れられるという。例えば、アカデミー賞の歴史を振り返るギャラリーでは、#OscarsSoWhite(白すぎるオスカー)や女性の候補者が少ないこと、そして黒人女性初のアカデミー助演賞を受賞したハティ・マクダニエルへの授賞式での待遇など負の歴史も紹介される。

 続く「映画制作の技術」セクションは、映画の芸術性を取り上げるもの。映画監督、脚本、キャスティング、撮影、音響効果、衣装デザイン、ヘアメイクなどのテーマをひとつずつのギャラリーで紹介していく。

「アイデンティティ」ギャラリー (C) Academy Museum Foundation / Image by WHY Architecture
「歴史」ギャラリー (C) Academy Museum Foundation / Image by WHY Architecture

 2階の最後のギャラリー「インパクト/リフレクション」では、ドキュメンタリーや劇映画がいかに世界を投影し、影響を与えるかを探る。ブラック・ライヴズ・マター、#MeToo、労働者関連、気候変動の4つの社会問題が軸だ。

 3階の最初のインスタレーションスペースでは、世界中の映像アーティストが企画ごとに共同でキュレーションを行う。オープニングの展示では、映画監督のペドロ・アルモドバルが12のスクリーンで、ミュージカル、宗教、メロドラマ、母親など彼の作品に頻繁に登場する数々のテーマを取り上げる。鑑賞者はペドロの視覚と音の世界に包まれ、その影響力、美学、そして作品に没入することができるという。

ペドロ・アルモドバルのインスタレーションのギャラリー (C) Academy Museum Foundation / Image by WHY Architecture

 次の4つのギャラリーは「世界とキャラクターの創造」を体験するもので、映画制作に欠かせないアニメーター、特殊効果アーティスト、キャラクターデザイナー、作曲家などにスポットを当てる。

「アニメーション」ギャラリー (C) Academy Museum Foundation / Image by WHY Architecture
「特殊効果」ギャラリー (C) Academy Museum Foundation / Image by WHY Architecture
「遭遇」ギャラリー (C) Academy Museum Foundation / Image by WHY Architecture

 常設展に加え、サバン・ビルの2階と3階には複数の追加インスタレーションも登場。例えば3階の「オスカーの没入型の体験」展では、拡張現実を利用してハリウッドのドルビー・シアターのステージ上でオスカー像を受賞するかのようなリアルな体験を提供するとしている。

 博物館の4階では、約1100平米の企画展示スペースで宮崎駿のアメリカ初の回顧展「Hayao Miyazaki」がこけら落とし展として開催。日本国外で初めて公開されるものを含む、オリジナルのイメージボード、キャラクター・デザイン、絵コンテ、レイアウト、背景画、ポスター、セル画など300以上の展示資料のほか、ワンシーンの大規模上映や没入型環境を通じ、宮崎アニメの世界を堪能できそうだ。

宮崎駿 『風の谷のナウシカ』イメージボード 1984 (C)1984 Studio Ghibli・H
宮崎駿 『となりのトトロ』イメージボード 1988 (C)1988 Studio Ghibli

 宮崎駿展の後は、「Regeneration:Black Cinema 1898–1971」展が開催。ワシントンDCにある国立アフリカ系アメリカ人歴史文化博物館と共同で企画した本展は、黒人アーティストが映画業界にもたらした功績についてはじめから探求する初めての試みとなる。

 ガラスの橋を介しサバン・ビルと接続しているのが、同館の特徴となる新たに建設された球体空間だ。博物館のプレミアフォーラムである1000席のデイビッド・ゲフェンシアターには、デジタル、16ミリ、35ミリ、70ミリ、ナイトレートフィルムを上映できるドルビー・アトモスサウンドのほか、60人のオーケストラピットも備えている。

アカデミー映画博物館、デイビッド・ゲッフェンシアター Photo by Iwan Baan / (C) Iwan Baan Studios, Courtesy Academy Museum Foundation

 また、シアターの上にあるガラスドームのテラスは無料で開放。ハリウッド・ヒルズを含むロサンゼルスの景色を一望できる。

アカデミー映画博物館、ドルビー・ファミリーテラス Photo by Josh White, JW Pictures / (C) Academy Museum Foundation

 オンラインで行われた記者会見で、同館の理事を務めるローラ・ダーンはこう話した。「これらは、アカデミーが長いあいだ夢見てきたスペースです。映画の多様で力強い物語を語る空間。世界を歓迎し、人々を芸術、科学、そして職人技の産業に没頭させ、映画制作の驚異的な魔法を実現させるクリエイターの物語をお伝えするのを待ちきれません」。

 なお開館までのあいだ、同館では映画産業のリーダーたちを招いたパネル・ディスカッション、ギャラリー・ツアー、映画上映、ワークショップ、家族連れや学生向けの教育プログラムなどのバーチャルプログラムを開催予定となっている。

 アメリカの映画産業の中心地に新たに誕生するアカデミー映画博物館。その開館を待ちたい。

アカデミー映画博物館の空撮画像 (C) Academy Museum Foundation
アカデミー映画博物館、デイビッド・ゲッフェンシアターの外観 Photo by Josh White, JW Pictures / (C) Academy Museum Foundation