古今東西、多くのアーティストたちが手がけてきた「肖像画(ポートレイト)」。そんなポートレイトの現在を示す展覧会「アジテイション:攪拌のポートレイト」が、コートヤードHIROOで始まった。会期は11月29日まで。
本展は、世界的な芸術大学であるロイヤル・カレッジ・オブ・アート(RCA)の出身者である7名によるグループ展。参加作家は、シベリ・カヴァリ・バストス、ニール・ハース、平澤賢治、石橋征子(いしばし・もとこ)、金澤韻(かなざわ・こだま)、小林勇輝、ヴィクトリア・シンだ。
この展覧会は平澤賢治と石橋征子の呼びかけによって実現したもの。「コロナや様々な対立による孤立状態が蔓延するなかで、他者の多様なあり方にふれる機会になれば」という考えのもとキュレーションされた。
会場に並ぶのは、様々なメディウムを使ったポートレイトの数々。例えば平澤は「Figure」シリーズにおいて、サーモグラフィーでとらえた人物の姿を表面温度の数字に置き換え表現した。被写体のぬくもりがそのまま記録されたポートレイトだ。
ニール・ハースがブラインドに描く男性像は、どこか儚げだ。隙間があり、揺れ動くブラインドにポートレイトを描くことで、「男性性」というもののイメージを覆そうとしているようにも見える。
いっぽうでヴィクトリア・シンは、女性である自身がドラァグ・クイーンを演じた映像作品を展示。「女らしさ」が「社会的・文化的に生み出された“つくりもの”に過ぎないことを示唆する」(会場のテキストより)。
「現代に生きるわたしたちの姿を捉えようとする時、古いカテゴリーでは窮屈すぎて、からだのあちこちが千切れてしまう。だからその人らしさをつかまえる、新しい発明が必要だ」(本展ステートメントより)。会場に置かれた金澤によるテキストを手がかりに、現代のポートレイトとは何かを考えてみたい。