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ジェンダーに関する意識を呼び醒ます。雑誌『IWAKAN』の創刊記念展がスタート

ジェンダーに焦点を当てたクリエイティブスタジオ「REING」による雑誌『IWAKAN』の創刊記念展が、東京・高円寺の書店「タタ」でスタート。本展の見どころを同誌の創刊メンバーの言葉とともにお届けする。

展示風景より、エド・オリバー「違和感瞬間:Gender Liberty」シリーズ

 世のなかの当たり前に「違和感」を問いかける雑誌『IWAKAN』の創刊記念展が、10月16日より東京・高円寺の書店「タタ」でスタートした。

 同誌は、親や学校、会社、メディアから投げかけられる「常識」に違和感を抱く人たちに寄り添うという目的でスタートしたもの。創刊号は「女男」を特集し、国内外のアーティストやクリエイターが旧体制的な男女の枠組を問いかける取り組みを紹介する。

 本展では、同号に掲載された作品の原画やアザーショット写真、そして本展のためにつくられた映像作品が展示。Runurunu、プログレッシブ・ジェニタリア、エド・オリバー、クレマン・デゼルス、アラーナ・スター、キャリー・タンの6人のアーティストが参加している。

展示風景より

 書店「タタ」2階の展示スペースに入ってすぐ目に映るのは、同誌の創刊メンバーのひとり、エド・オリバーによる写真シリーズ「違和感瞬間:Gender Liberty」。このシリーズでは、日常生活の一部としての電車のなかで、男子高生が化粧をしている様子や、女子高生が胸をはだけた男性が表紙の雑誌を読んでいる姿を写している。一見、性別の反転を意味するようにも見える作品だが、同誌の編集者のひとりであるジェレミー・ベンケムンはこう語っている。

 「高校時代は、人々のセクシュアリティが発達し、自分自身に関するアイデンティティを形成する重要な時期だ。日本の高校では性教育がほとんど行われておらず、また、女子高生は日本の社会でもっとも性的な視線にさらされる存在だと思う」。

 そうした女子高生が足を広げて座ることに違和感を感じるという考え方に対し、ベンケムンはこう続ける。「電車のなかで女子高生が足を広げて座るのが下品だと考える人は、自分自身が下品な考え方を持っているのではないかと考えてほしい。もちろん、そんなことを奨励するわけではないが、他人の身体は尊重するべきだということを強調したいと思う」。

展示風景より、Runurunu「Animagra」シリーズ

 いっぽう、宗教やジェンダーをビジュアルアートで表現するアーティスト・Runurunuの写真シリーズ「Animagra」からは6点が展示された。楽園を象徴する「エデン」(Eden)から、快楽(Pleasure)、拘束(Restraint)、変身(Transformation)、受胎告知(Annunciation)、妊娠(Pregnant)までの物語として構成されているこれらの作品。幼少期よりキリスト教系カルト教団で育った経験を持ち、成人後のホームレス期間や自身がクィアであることが制作活動の動機に深く影響を与えたアーティストにとって、性別を問わない人魚は、ある種のセルフ・ポートレートでもあるという。

展示風景より、クレマン・デゼルス《The 1001 Lives of Allanah Starr》(2020)

 会場では、トランスジェンダー女性のエンターテイナーで元ポルノ女優であるアラーナ・スターのインタビューを収録した映像作品が上映。キューバ出身のスターは幼少期に政治難民として家族とともにアメリカ・マイアミに移住。1999年にニューヨークに移り住んだあと、ドラァグクイーンやポルノ女優としてのキャリアをスタートさせ、現在は、フランス・パリのキャバレー「ル・マンコ」で主演ショーガールを務めている。

 アーティストのクレマン・デゼルスが撮影・インタビューしたこの映像では、スターは生い立ちからトランス時の経験、キャリアへの思い、世界観までを振り返っている。また、インタビューのフルテキストは、雑誌『IWAKAN』に収録された。「誌面のテキスト以外にももっとコンテキストがあるべきだと思って、今回の映像作品を依頼した。また、彼女は非常に面白い女性なので、話していると『聖書』を読んでいるように感じてしまう」。

展示風景より、「性参拝」コーナー

 また、展示会場には「性参拝」コーナーも設立。ジェンダーや資本主義、生物学をミックスしたアーティストのプログレッシブ・ジェニタリアは、タコやサンゴなどの深海生物をかたどった「性器」をモチーフにしたカードを制作。鑑賞者はこれらのカードに自分だけの性的空想など祈りの言葉を書き込み、会場の壁に飾ることが可能だ。

 このコーナーについて、ベンケムンは「変わった性癖やセックス依存症を奨励するのではなく、様々な性的嗜好や性のあり方を見せたかった」とし、本展の趣旨については次のように述べている。「私たちは法律や人々が変わるのを待つことはできない。自由のために立ち向かっていく必要がある。『IWAKAN』が人々の意識を呼び醒ますようなものになるのを願っている」。

展示風景より、「性参拝」コーナー

編集部

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