今年夏に第1回⽬を迎える予定だった民間主導の国際芸術祭「東京ビエンナーレ2020/2021」。その関連企画として、東京・丸の内と有楽町で3名のアーティストによる展示が始まった。
東京ビエンナーレ2020/2021は「⾒なれぬ景⾊へ」をテーマに、都内の北東エリアを中心とする公共空間や学校空間、寺社会堂、歴史的建造物、公開空地など様々な場所で作品を展開する民間の国際芸術祭。今年初回を迎えるはずだったが、新型コロナウイルスの感染拡大によって、コア期間を2021年7⽉〜9⽉に再設定することとなった。
同ビエンナーレでは、コア期間までをプレ期間として、展⽰やワークショップ、シンポジウムをオンライン/オフラインで開催。その一環として始まったのが、この「⼤丸有SDGs ACT5×東京ビエンナーレ2020/2021」だ。
「⼤丸有SDGs ACT5×東京ビエンナーレ2020/2021」は、三菱地所株式会社を筆頭とする大丸有(大手町・丸の内・有楽町)エリアの事業者によるSDGs推進プロジェクトである「⼤丸有SDGs ACT5」とのコラボレーション。新型コロナ感染拡⼤を受け改めて環境に負荷をかけない社会のあり⽅が求められるなか、気候変動や温暖化、社会の問題に対しアートは何ができるのかを考えるきっかけを提示する。
参加作家は栗原良彰(展示期間:8⽉21⽇〜30⽇)、Hogalee(8⽉21⽇〜9⽉6⽇)、廣瀬智央(8⽉21⽇〜10⽉25⽇)の3名。栗原とHogaleeは丸ビルを、廣瀬は新有楽町ビルを会場にそれぞれ新作を制作した。
栗原は、気化熱の仕組みを内包した⾼さ3メートルの巨⼤彫刻《大きい人》を発表。鑑賞者が作品に対して打ち水のように水をかけることで、周囲の温度を下げるというユニークな作品だ。
現代を映す鏡として“⼥性”をモチーフにし、漫画描写の線画で記号化した「オンナノコ」を描き続けているHogalee。今回は、丸ビル1階マルキューブの大ガラス面に、「東京」のイメージを想起させる5つの表情の女性像を描いたという。5つの色は、SDGsからイメージされている。
ミラノを拠点に活動し、今年アーツ前橋で個展 「地球はレモンのように⻘い」を開催したばかりの廣瀬。新有楽町ビルでは、同展のために制作された作品《フォレスト・ボール》を展示した。直径2.5メートルの球体の作品は、森のように⼈⼯植物(造花)によって覆われており、“⼈⼯”でできた“⾃然”というふたつの相反するものが、球体という地球や宇宙を想起させるかたちをつくる。「両義性」をコンセプトにしたこの作品で、廣瀬は“⼈⼯”や“⾃然”という概念を改めて問い直し、意味を転倒させることで新たな想像が広がることを狙う。
今回の取り組みについて、東京ビエンナーレ2020/2021のディレクターである中村政人は「(ビエンナーレの)コア期間は延期したが、今年はコロナ禍だからこそできることを一つひとつ積み重ね、進めていきたい」とし、本展の意義をこう語る。「東京のど真ん中であるこの場所で作品を発表するということは、経済中心主義から離れ、新たな日常のあり方を鑑賞者個人個人が実感し、アクションするきっかけになりうるのではないか」。
大丸有エリアでは、CADAN有楽町がオープンするなど、アートへのこれまで以上のコミットメントが期待されている。⼤丸有SDGs ACT5運営委員会委員長で三菱地所エリアマネジメント企画部担当部長の井上成は、次のようにアートと街づくりの関係性について話す。「有楽町の街づくりにアートを取り込もうと活動している。現代は不確実な時代。街づくりにおいても先を決め付けず、様々な意見を取り入れながら積み上げるというアプローチをしている。そうしたとき、アーティストの考え方や感度を街づくりにインプットし、たんなる展示だけでなく一緒になって街づくりしていきたい」。