中国四川省成都の郊外、道教の聖地である老君山の麓に、隈研吾が建築設計を手がけた私設美術館「知・芸術館」がある。
光と水をテーマとした本館は、「道は自然に法る」という東洋の哲学を体現するもの。水に囲まれた建物の外壁には、地元の工場で伝統工法によってつくられた瓦をステンレスのワイヤーで固定。軽やかで透過性のあるスクリーンをつくりだしている。この瓦のスクリーンは自然光を館内に引き込む役割を果たし、ラフでナチュラルな瓦を使用することで、建築は周囲の自然と有機的に調和している。
同館の館長・王从卉(ヴァレリー・ワン)は、美術館についてこのようにコメントしている。「知・芸術館は、現代美術の国際的な文脈のなかで、東洋美学の過去、現在そして未来を探求することに焦点を当てています。『知』は完全に開放的なシステムを意味しており、既知の世界から未知へ、そして有限から無限へと探求することを目指しています」。
地下1階と地上2階で構成される美術館は、約2400平米の展示スペースを持つ。2014年7月にはデザイナー・原研哉が企画した「犬のための建築」展をこけら落としの展覧会として開催。その後、東洋美学に特化した展覧会を開催するとともに、趙無極(ザオ・ウーキー)や井上有一、曽梵志(ゾン・ファンジー)など東洋の近現代美術を代表するアーティストの作品によるコレクションを形成してきた。