「Exploring Ⅱ- 日常に息づく芸術のかけら- 」が、東京・表参道のスパイラルガーデンで開催される。会期は1月23日〜27日。
今日では「アール・ブリュット」という言葉が社会に浸透し、障がいのある人の作品を見る機会も増えた。いっぽうで「障がい者」や「アール・ブリュット」という言葉によってひとくくりにされ、個々の作家や作品について、美術の問題として批評の俎上にのらずにいる現状を指摘することもできる。
世界に目を向ければ、近年の現代美術の潮流として、社会的にマイノリティとされてきた人々の表現を取り上げる実践が進み、障がい者が制作した作品も世界的に著名な美術館での収蔵が進んでいる。「Exploring Ⅱ- 日常に息づく芸術のかけら- 」は、このような背景をもとに、日本において障がいのある人々の作品を現代美術としてとらえ、評価や批評を促進する契機にすることを試みるものだ。
本展は4つのキーワードで構成される。1つめのキーワード「いとしきもの」は、古今東西、人はなぜ絵を描き、ものをつくるのか、そしてそれを見る人はなぜ惹かれるのかというストレートな問いに向き合う。このキーワードに沿って、皿や積木などをモチーフに独特の光と質感が漂う油絵を描く小林孝亘、昆虫と恐竜が合体した空想上の生物を1枚の紙から生みだす曽祇一晃、生活のなかの静物をパステル画で丁寧に描く舛次崇、幼少期から慣れ親しんだ本を用いて時空を超えた言葉の交信を誘う福田尚代を紹介する。
2つめのキーワードは「手わざ」だ。これまで美術のメインストリームでは扱われてこなかった紙や布、糸などの素材を使った作品を取り上げる。ここでは社会の中に横たわるジェンダーなどの問題をテーマに切り紙の技法を自覚的に用いて制作する谷澤紗和子、紙とハサミというありふれた道具で、見たことのない紙の彫刻をつくる藤岡祐機、糸を切り結ぶという素朴ながら果てしない行為の積み重ねで愛らしい糸玉を生みだす似里力の作品を見ることができる。
3つめのキーワード「ルーティン」では、「単位」を無数に繰り返すなど、驚くべき集中力で一つひとつの小さな行為の集積によって生まれる、圧倒的な力にフォーカス。ここでは、システマティックな手法で「ドット」を置き続ける森本絵利、世界を「数字」によって把握し書き出す柴田龍平、「釘」を打つことで精神の安寧を求める平田安弘、何かを満たすかのようにカレンダーに「文字」を重ねる松本国三の作品を展示。
4つめの「文字をこえて」は、見慣れた文字が言葉の意味や規則から解き放たれ、新たなコミュニケーションをつくり出すような作品を紹介。ここでは、文字の原理的特性を追求している立花文穂、文字を高い密度で重層化させながら世界を反映させる平野喜靖、一見美しいカリグラフィですが実は錯覚を呼び起こす上土橋勇樹の作品を紹介する。
なお、今回の出展作家の中には海外の歴史ある美術館で作品が収蔵されている作家もいる。例えば、舛次崇がアール・ブリュット・コレクション(スイス)、ポンピドゥー・センター(フランス)、藤岡祐機がアメリカン・フォーク・アート・ミュージアム(アメリカ)、松本国三がアール・ブリュット・コレクション(スイス)、ポンピドゥー・センター(フランス)などを、日本で見る機会にもなる。