都市のなかのオルタナティブな「学び場」になりたい
小林 第1回の盛り上がりを受けて、今月には第2回となる「バグスクール:野性の都市」の開催へと漕ぎ着けることができました。もちろん今回も引き続き、池田さんにキュレーションをお願いしています。
池田 昨年は「うごかしてみる」をテーマにして身体性を考えてみようとしたのですが、今回は「都市」に着目しています。都市とは複層的かつ複雑で、それを見つめる視座は人によって様々です。そこで今展では、都市の表層を引き剥がして、プリミティブな都市の姿をさらけ出せないかと考えました。
ただしバグスクールでは、統一したひとつの物語を提示するのではなく、学び場として多様な表現や意見に触れられるようにしたかったので、都市を個性的な視点から大胆に解釈して作品化してくれるようなアーティストにお声がけし、そのキュレーションを試みました。結果、7人の参加アーティストは個性的な視座や感覚を大切にしながら、強烈な世界観を築いていく人ばかりとなりました。
石井 展示場所となるBUGの会場構成も、練りに練ったものとなりましたね。
池田 「都市」がキーワードなので、まず私が会場内に二層構造のインフラを構成しました。そのうえで「スロープの上下で展示できますか」「2階部分を使ってください」などと、各アーティストにスペースを振り分けていきました。投げかけたお題に対して、彼らがどう応答するかを見てみたかったのです。
するとアーティストの側もこちらの問いかけに乗っかってくれて、展示壁の奥にひっそりとあったシャッターや扉を見つけて「これも使っていいか」などと、思いがけぬ提案をしてきてくれたこともありました。天井高のある大きい空間を存分に活用した展示ができあがったかと思います。
小林 前回に引き続き、会場内にラーニングスペースが設けられているのも特徴的です。
池田 作品鑑賞の前後にひと息つける場が欲しかったので。スペースには本棚を設置しており、参加アーティストによる推薦書籍も並べています。それらを手に取っていただくと、彼らのキャラクターや思想のより深い部分に触れてもらえるのではないかと期待しています。
加えて今回は、ラーニングスペースをプライベートな部屋のような設えにして、各アーティストの小作品を数点ずつ置いてみました。仮に作品を購入して部屋に飾ったらどういう見え方になるか、体感していただけると思います。
石井 各種イベントが目白押しなのも前回と同様です。参加型プログラムが14回以上、それに親子鑑賞イベント、アーティストトークやキュレータートークなども多数用意しています。来ればいつでも何らか興味深いことが行われている、そんな状況を生み出したいですし、イベントを通して作品への興味をより深めていただければと思います。
小林 昨年の参加型プログラムでは、参加者の皆さんがアーティストにどしどし話しかける様子が見られました。展覧会にアーティストが在廊しているときに声をかけるのは少しハードルが高いけれど、プログラム中だとごく自然に交流することができるようでよかったです。
石井 展覧会を観覧くださる方もイベント参加者も、多様な属性になっているのがまたうれしいです。展示を目当てに来る方はもちろん多いですが、仕事帰りや観光の合間、新幹線や高速バスの待ち時間、併設のBUG Cafe から流れてきたりと来場パターンは様々になっています。
池田 バグスクールが、とかく正解を求められがちな学校や会社とはひと味異なる、都市のなかにあるオルタナティブな学び場として機能するようになれば何よりです。作品やアートのことに留まらず、私たちを取り巻く社会や環境などについて広く、ともに考えるきっかけがここから生まれてくることを願っています。
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