コムデギャルソン青山店が居を構えるNBF ALLIANCE ビルの4階にあるGARDE Galleryで、動物と人間の関係をモチーフに、鑑賞者の感性に問いを投げかけるアーティスト・篠原唯紀(Yuqi Shinohara)の個展「FROZEN SUPERMARKETS」(フローズン スーパーマーケット)が開催される。会期は2024年9月28日~10月12日。
篠原は1991年生まれ。2014年の広島市立大学芸術学部卒業後に渡米し、ニューヨーク・ブルックリンを拠点に制作活動を行っていた。現在は日本在住。また、Q.i の名義でミュージシャンとしても活動しており、自身のインディーズバンド「Milk Talk」は、23年11月にフルアルバムをリリースするなど、時代の感性を反映したレトロなエレクトロファンクの作風が、国やジャンルの境界を超えて親しまれている。
美術作家としての篠原は、主に生物(とくに食物としての動物)を消費することに対する個人的な葛藤をモチーフに、映像やインスタレーションなどの形式で作品を制作してきた。近年、人間と動物との関係については、食の問題のみならず、ウールや毛皮などをつかった装飾品や皮革製品の使用、ペットショップや動物園のありかたに至るまで、様々な議論が行われている現状がある。本展タイトル「FROZEN SUPERMARKETS」も、人間が動物を消費し続ける構造が止められないことを象徴しているという。
篠原の作品は、一見すると「美しく」仕上げられていながら、動物由来の素材が使用されているなど、残酷な一面をあわせ持つ。それは、「美」という漢字の成り立ちが「大きく肥えた羊」だと言われているように、あるいは「美」という概念や感覚の背後に、犠牲にされる動物の姿が潜んでいるのかもしれないことを示唆するようでもある。「ヴィーガン」など、動物を消費しないライフスタイルを表す様々な概念も⽣まれているが、篠原は、作品を通じて特定の立場を賛美することはせず、むしろ言葉にしないために作品をつくっているのかもしれない。
本展では、美術批評家・飯盛希をキュレーターとして迎え、篠原の作品を、論理的な思考を脱却する新しい感性の可能性として提示するという。「美」と「醜」の矛盾する要素を結びつけた表現方法は、「右」や「左」といった両極端を二項対立とするのではなく、むしろ表裏一体のものとして括りなおす回路になりうることを示すものとなるだろう。
会場では、篠原が音楽活動を通じてクラブカルチャーと密接に関わりながら得た感覚を、自身のテーマと重ね合わせることで制作した作品約10点を展示。「音止めなし」のDJやバレエのピルエットなどが回り続けるのを良しとするように、何度でも再生される音楽は、繰り返される輪廻転生を表しているのかもしれない。
会期の初日には、レセプションパーティーに先立ち、井波吉太郎(アーツ前橋 学芸員)をゲストとして迎えたトークイベントも実施予定だ。関心のある方はぜひ足を運んでみてはいかがだろうか。