第4回「Tokyo Contemporary Art Award」、受賞者は津田道子とサエボーグに決定

中堅アーティストを対象に、2018年度から実施されている現代美術賞「Tokyo Contemporary Art Award(TCAA)」。その第4回の受賞者に津田道子とサエボーグが選出された。

 中堅アーティストを対象に、海外での展開も含めさらなる飛躍を促すことを目的に東京都と公益財団法人東京都歴史文化財団 東京都現代美術館 トーキョーアーツアンドスペースによって設立された現代美術賞「Tokyo Contemporary Art Award(TCAA)」。その第4回の受賞者は、津田道子とサエボーグに決定した。

 津田道子は1980年神奈川県生まれ。映像メディアの特性に基づき、インスタレーションやパフォーマンスなど多様な形態で制作を行っている。その作品では、映像装置やシンプルな構造物を配置した空間で、虚実入り混じり、パフォーマーとの境界が曖昧になる鑑賞者の視線や動作を、知覚や身体感覚についての考察へと導く。また、2016年よりパフォーマンスユニット「乳歯」として、小津安二郎の映画作品における登場人物の動きを詳細に分析し、そこに内在する人との距離や、女性の役割に関する問題を可視化するパフォーマンスなども展開している。

「Back TOKYO Forth」展示風景(東京国際クルーズターミナル、2021)より、津田道子《東京仕草》(2021) Photo by Akira Arai
「オープン・スペース 2016 メディア・コンシャス」展示風景(NTTインターコミュニケーション・センター [ICC]、2016)より、津田道子《あなたは、翌日私に会いにそこに戻ってくるでしょう。》(2016-20) Photo by 山本糾

 いっぽうのサエボーグは1981年富山県生まれ。半分人間で、半分玩具の不完全なサイボーグとして、人工的であることによって、性別や年齢などを超越できるととらえる自作のラテックス製のボディスーツの作品で知られている。カラフルで、デフォルメされた雌豚や牝牛などの家畜や害虫などが繰り広げるパフォーマンスやインスタレーションも国内外で展開している。その作品は一見明るく楽し気だが、人間の残酷性や消費の問題のみならず、人間社会における介護やケアの問題にも接続し、強者/弱者、支える側/支えられる側という二項対立ではおさまらない、多様性の受容、共生の問題に発展させている。

サエボーグ「Cycle of L」公演風景(高知県立美術館、2020) Photo by 釣井泰輔
サエボーグ「あいちトリエンナーレ2019 情の時代『House of L』」公演風景(愛知県芸術劇場、2019) Photo by 蓮沼昌宏

 今回は選考委員として野村しのぶ(東京オペラシティ アートギャラリー シニア・キュレーター)が加わり、ソフィア・ヘルナンデス・チョン・クイ(クンストインスティテュート・メリー ディレクター)、高橋瑞木(CHAT[Centre for Heritage. Arts and Textile]エグゼクティブディレクター兼チーフキュレーター)、キャロル・インハ・ルー(北京中間美術館 ディレクター)、近藤由紀(トーキョーアーツアンドスペース プログラムディレクター、公益財団法人東京都歴史文化財団東京都現代美術館トーキョーアーツアンドスペース事業課長)の6名が選考を行った。

 選考委員長を務めているキャロル・インハ・ルーはステートメントで次のようなコメントを寄せている。

 選考委員会では、これまでアーティストのスタジオ訪問を選考の重要な判断材料のひとつとしてとらえてきた。今回、TCAAチームの優れた段取りのおかげで、実際に現地を訪問した選考委員も、オンライン参加の選考委員も、作家の創作活動について総合的に把握し、理解を深めることができた。私たち選考委員は各作家の話にじっくりと耳を傾けるとともに、作品とその思考について具体的に質問した。このようなやりとりや深い関わりは、受賞が誰になるのかという最終結果を決めるための手段だけではなく、選考委員にとって有意義な学びの場となっている。また、アーティストにとっても同様であることを願う。
 選考はスタジオ訪問を踏まえて慎重に検討が行われる。日本と海外いずれの選考委員も、日本の作家の作品について率直に意見を交わすとともに、異なる視点から作品を理解しようと互いに努力を重ねた。選考の議論は、結論を出すことにとどまらず、今日の変化し続ける世界情勢における芸術活動の意義について深く考えるものでもあった。
「トリローグ」展示風景(TARO NASU、2020)より、津田道子《トリローグ》(2020)
©︎ Michiko Tsuda Courtesy of TARO NASU
Photo by Kei Okano
サエボーグ「東京レインボープライド2014『Slaughterhouse-10』」公演風景(代々木・渋谷・原宿を走行、2014) Photo by 斉藤芳樹

 受賞者に対しては、賞金300万円のほか、海外での活動支援や、東京都現代美術館での展覧会およびモノグラフ(日英)の作成など、複数年にわたる継続的な支援が行われる。なお、「TCAA 2022-2024」の授賞式および受賞記念シンポジウムは、3月20日に開催予定となっている。

編集部

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