1980年代に欧米で隆盛を極めていたポストモダン(脱近代)の潮流のなか、ロンドンで起こった現代アートムーブメント「YBAs(Young British Artists)」。そのYBAsと関連するアーティスト、ダミアン・ハースト、ジュリアン・オピー、サー・マイケル・クレイグ・マーティンの作品を展示・販売する「英国現代美術の巨匠たち」が阪急うめだギャラリーで開催される。会期は10月5日〜17日。
現代アートの中心地のひとつであるロンドン。そこで起きたムーブメントが1980年代に頭角を現したYBAsだ。YBAsは衝撃的なコンセプトで新しいアートのあり方を提示することで社会現象を起こし、世界の美術史に大きな影響を与えた。
YBAsの中心となったアーティストの多くはアート、美学、社会学の分野で世界的名声を集めるロンドン南東部のゴールドスミス・カレッジを卒業。そこで教鞭をとり、教授として大きな影響を与えたのが、本展で紹介するアーティストのひとり、サー・マイケル・クレイグ・マーティンだ。
クレイグ・マーティンは1941年アイルランド・ダブリン生まれのアーティスト。ニューヨークのイエール大学で美術を学び、1960年代からロンドンを拠点に活動している。日々の暮らしのなかで身の回りにあるオブジェを題材に、シンプルなフォルム、豊かな色彩で描くコンセプチュアルな作品が特徴だ。現在はゴールドスミス・カレッジ名誉教授。
YBAsを牽引したダミアン・ハーストは、クレイグ・マーティンの指導のもと、ゴールドスミス・カレッジ時代を過ごした。既成のアートへの挑戦や商業経済としてのアートにも着目し、カラフルなドットをモチーフにした「スポット・ペインティング」で世界的に注目を集め、牛や羊をホルマリン漬けにしたシリーズは世界的にセンセーションを巻き起こした。1995年には現代美術の世界で権威あるターナー賞を受賞。近年はNFTなども手がけるなど積極的な活動を展開し、今年春には国立新美術館で日本初の美術館個展「ダミアン・ハースト 桜」を開催。大きな話題を呼んだ。
ジュリアン・オピーもハースト同様、ゴールドスミス・カレッジでクレイグ・マーティンのもと、美術を学んだアーティストだ。日本の浮世絵から大きな影響を受けているオピー。人物や建造物などをシンプルな線によって描く手法で広く知られている。日本では2019年に東京オペラシティ アートギャラリーで個展が行われた。
本展は、イギリスにおける現代アートの先駆けとなった3人が共演するまたとない機会となっている。会場ではその師弟関係も感じながら鑑賞してほしい。
なお、これらの作品は販売も行っており、阪急百貨店のリモートショッピングサービス「Romo Order〈リモオーダー〉」で、スマートフォンから注文可能だ。