若手表現者を応援するガーディアン・ガーデンの公募展入選者のなかから、各界で活躍する作家の継続的な活動を伝えるための展覧会シリーズ「The Second Stage at GG」。その52回目として、池崎一世・佐藤麻優子・染井冴香のグループ展「whereissheus」(ウェアイズシーアス)が2月8日より開催される。
池崎一世は、人との関係性や家族のあり方をテーマとする作品で第5回写真「1_WALL」ファイナリストに選出。佐藤麻優子は、人生に対する焦燥感や等身大の感覚を表現した作品で第14回グランプリを受賞し、染井冴香は空虚な世界を表したインスタレーションで第13回ファイナリストに入選した。
写真という共通項からつながり意気投合した3人が、2019年から緊急事態宣言期間を挟み約2年ものあいだ、対話を幾度も重ね相手のなかに自らを見るような体験をしながら、それぞれの視点で作品を制作。学校、公園、ホテル、自宅近くの森、ニュータウンなど、過去の記憶から連想される場所で場面をセットアップし、自身や互いを被写体に、ときにはカメラを交換しながら撮影を行った。
本展では、そのなかから生まれたポートレートを中心に展示。写真のなかに登場する作家自身は、自分ではない他者の役割を演じ、演劇性を内包している。また家族のなかでの父、母といった役割や、恋人、労働者、女性、男性、子供、大人などを示唆することにより、社会規範が求める様々な枠組みに対する強烈な違和感を発しているようにも解釈できる。
本展に際して、アーティスト3人は次のようなメッセージを寄せている。
私たちは生活環境も歳もばらばらですが制作における意思決定や計画などを補完し合いながらやってきました。それはアイデンティティーについて考えることになりましたが、これもあくまでわたし個人のセンチメントであって、各自が写真や現場についてそれぞれの思いや考えを持っていると思います。そういった多様な同価値のものの集まりが現実であるような、そんなことをあらためて実感する経験でした。(池崎一世)
これはとても曖昧な展示だと思います。写真を通してつながった、3人の展示です。私たちは生い立ちも年齢も性格も考え方も違う人間です。しかし、それぞれがこれまで撮ってきた写真を観たときに、古くから相手を知っていたような、なにか深いところでつながっているような、不思議な感覚がありました。それが何なのかは、制作し終えたいまでもわからないままです。
お互いの記憶や経験が溶け合っていくように感じながら、やはり私たちはまったく違う人間なのだと境界線を感じながら、それぞれの人生の空間を行き来して、旅するようにして撮影した写真群の展示です。(佐藤麻優子)
2021年3月に15年過ごした家がなくなり、自分の周りにあった環境について以前より考えるようになりました。
育った家やそのなかの空気や温度、かたち、それの流れのなかにいた人々、木々、母と最後に過ごしたリビング。昔行った海岸、もう多分会わない同級生、私の憧れた色やかたち。メモをするように撮りました。(染井冴香)
なお、会期中の2月15日には美術評論家の光田由里をゲストに迎え、トークイベント「写真を通した3人の距離感」が開催。予約はこちらから。