イギリスの現代美術を代表するアーティストデュオ、ギルバート&ジョージの個展が東京・表参道のエスパス ルイ・ヴィトン東京(ルイ・ヴィトン表参道ビル7階)で始まった。会期は2022年3月27日まで。
ギルバート&ジョージは、ギルバート・プロッシュ(1943年、イタリア生まれ)とジョージ・パスモア(1942年、イギリス生まれ)の2人によるユニット。1967年にロンドンのセント・マーチンズ・スクール・オブ・アートで出逢い、現在のかたちである「ギルバート & ジョージ」を結成した。
結成から間もない1969年には、最初期の公開パフォーマンスのひとつ《Singing Sculpture(歌う彫刻)》を実演。これは、ブロンズ粉を顔に塗った2人がテーブルの上に立ち、カナダ人映画監督レッド・デイヴィスによる1937年の映画『Underneath the Arches(アーチの下で)』で歌われる表題曲をロボットのような動きとともに口ずさむ、というものだった。
71年には写真作品にも取り組みはじめ、74年からは複数の写真を組み合わせてひとつの作品にまとめるという手法を実践。2000年代初め以降はCGを使用して、現代世界の動静を取り上げるようになった。その活動は現代美術の世界でつねに注目されており、86年にはイギリスの権威ある賞「ターナー賞」を受賞。その後2005年にはヴェネチア・ビエンナーレにイギリス代表作家して参加し、07年にはテート・モダンで大規模な回顧展が開かれている。
フランス・パリのフォンダシオン ルイ・ヴィトンのコレクションから選りすぐった所蔵品を世界中で展開する「Hors-les-murs(壁を越えて)」プログラムの一環として開催される本展では、ギルバート&ジョージの大型の3連作《Class War, Militant, Gateway(階級闘争、闘争家、入り口)》(1986)が日本初公開。
共同体への所属から、個人的良心や自己肯定の出現まで、個人の冒険を描く本作。彼らのほとんどの作品の場合と同様、そのイメージは黒枠の格子状に配置され、赤、白、青が主体のフリーズ(帯状装飾)となっている。ギルバート & ジョージは本作において、垂直的な「抑圧のピラミッド」を、一見階級によって分けられていないように見える社会の水平性へと置換。民主的な調和が、前景に描かれた登場人物たちが穿いている簡素な長ズボンや短パンなどの青い仕事着を通して表されている。
日本においてギルバート & ジョージの作品が展示されるのは2009年以来。この貴重な機会をお見逃しなく。