2015年の練馬区立美術館での個展以降、2016年に東京、京橋の加島美術にて「0の祈り」を開催、その後海外のアートフェアなどでも作品を展開し活躍の場を広げている浜田浄。その国内では3度目となる大規模個展「記憶の地層 -光と影-」が、神楽坂の√K Contemporary(ルートKコンテンポラリー)で開催される。会期は9月19日~10月24日。
浜田浄は1937年高知県生まれ。61年に多摩美術大学美術学部絵画科油画専攻卒業後、戦後の現代美術界に大きな影響を与えた斎藤義重との出会いなどを経て、独自の抽象表現を追求してきた。77年の現代版画コンクール展では佳作賞を受賞したことで一躍注目を集め、以降、国内外を問わず多くの展覧会で精力的な活動を重ねている。
80年代、鉛筆で一本一本線を引き、白い紙の上に黒い鉛面をつくり出す「Drawing」シリーズを発表した浜田。このシリーズは浜田を代表するものでありながら、80年代以降はこのシリーズから離れ、「削る、引っ掻く、重ねる」といった様々な手法を用いて作品を生み出してきた。
本展で、浜田は自身の軌跡をたどるようにこの「Drawing」シリーズに再度挑戦。80年代の作品とともに、3メートルを超える新作を発表する。
加えて今回は、初公開となる新シリーズも展示される。こちらは浜田がこれまで手がけてきた平面作品とは異なり、合板と木片で構成された半立体の作品。合板に木片を重ねることで、モノクロームのなかに光と影をつくり出す。見る角度によって様々な表情を見せる陰と陽、浜田の「今」を体現するものとなる。
80年代からの軌跡をたどり、いまだからこそ生み出せる浜田の新たな表現を楽しめるこの大規模な展覧会。会期中には浜田に加え秋元雄史(東京藝術大学美術館館長・練馬区立美術館館長)と福住廉(美術評論家)を招いたギャラリートークも予定されているので、こちらもチェックしてもらいたい。
一所不住。 過ぎた記憶を目の前にして今感じること。 今こそ、自在に力(動き)が加えられる位置に在ることを実証できればと思います。 ──浜田浄