さらに、クリムトが夏の避暑地アッター湖畔で描いた風景画《花咲く草原》(1908、推定8000万ドル超/約118億円)と《アッター湖畔ウンタラッハの森林斜面》(1916、推定7000万ドル超/約103億円)が出品される。前者はモザイクのように咲き誇る野花を正方形キャンバスに収め、後者は晩年の滞在で描かれた最後の風景画とされる。いずれもこれまで市場に出たことがない重要作で、クリムトが自然の生命力を探求した成果として注目される。


同コレクションは絵画だけにとどまらない。アンリ・マティスによるブロンズ彫刻6点も一括で出品される予定で、落札総額は3000万ドル以上(約44億円)と予想されている。さらに、エドヴァルド・ムンク、パブロ・ピカソ、アグネス・マーティン、クレス・オルデンバーグ&クージェ・ヴァン・ブルッゲンといった多彩な作家の重要作が並び、ローダーの審美眼の広がりを物語る。



1933年に生まれたローダーは、半世紀以上にわたり美術界で影響力を持ち続けたコレクターであり慈善家でもあった。66年にサザビーズでドイツ・ダダの作家クルト・シュヴィッタースのコラージュを購入して以来、キュビスムを中心に収集を拡大。やがて世界屈指の個人キュビスム・コレクションを築き上げた。2013年には89点のキュビスム作品をメトロポリタン美術館に寄贈し、その近代美術コレクションを一変させたことは広く知られている。
また、ホイットニー美術館では理事長を務め、2008年には1億3100万ドルという同館史上最大の寄付を行い、ダウンタウンへの移転を実現させた。ホイットニーやメトロポリタンへの作品寄贈や購入支援も含め、アメリカの美術館界における影響力は計り知れない。サザビーズのチャールズ・F・スチュワートCEOは今回の出品について、「芸術、慈善、ビジネスの世界における巨人であり、比類なきコレクションを託されたことを光栄に思う」とコメントしている。
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