• HOME
  • MAGAZINE
  • NEWS
  • MARKET
  • 「フリーズ・ソウル2025」開幕レポート。揺れる市場のなかでパン…

「フリーズ・ソウル2025」開幕レポート。揺れる市場のなかでパン・リージョナルなフェアが示した方向性【3/3ページ】

 現在の経済状況のなかで、大手ギャラリーは地元のコレクターとの関係をより深め、看板作家に限らず幅広い作家を紹介する戦略を強めている。いっぽう、中小ギャラリーは輸送費や人件費の削減、事前販売による収支安定化、あるいは積極的に複数のアートフェアに参加して各国の新規顧客層を開拓するなど、様々な方策を模索している。

 フリーズ・ソウルも、初期の2回に見られた熱狂のあと、欧米からのコレクター減少という課題に直面している。今年はニューヨークの「アーモリー・ショー」やブラジルの「サンパウロ・ビエンナーレ」と開催時期が重なり、欧米のコレクターやキュレーターはどこに足を運ぶか選択を迫られる状況となった。

会場風景より

 こうしたなかで、フリーズ・ソウルは国際的なフェアというよりも、次第に「パン・リージョナル」な性格を強め、域内のギャラリーやローカル・コレクターの育成により焦点を当てつつある。とくに日本をはじめとするアジアからの出展ギャラリーの増加はその象徴的な動きと言える。

 この点について、フリーズ・ソウルのディレクター、パトリック・リーは次のように語っている。「私はアジアのギャラリーを積極的に支援したいと思っています。それが私の目標であり、つねにより良いプラットフォームを目指して努力を続けたいのです」。

 また今年の市場環境について、リーは次のようにコメントした。「今年は世界的に厳しい状況で、韓国も例外ではありません。ただ、博物館や美術館では優れた展覧会が続き、来場者数も好調です。(作品購入の)緊迫感は以前より薄れましたが、その分、コレクターはじっくり考えながら良い作品を購入しています。これは決して悪いことではなく、市場はつねに循環してきました。重要なのは熱意と質の高いプログラムであり、この前向きな雰囲気を嬉しく思っています」。

会場風景より

 さらに、中国経済の減速や世界各地の紛争、アメリカの不確実性など厳しい国際情勢が続くなかでいかに優位性を維持するのか、との問いに対してリーはこう答える。

 「ソウルは非常にビジネスフレンドリーであり、アートに理解のある都市です。政府の後押しもあり、新しいアーティストやコレクターと出会う機会に満ちています。アート界はもともとグローバルで、それぞれの地域が固有のアイデンティティを持っています。フリーズ・ソウルはその独自性を活かし、世界の異なる観客層を結びつける場となり得る。物流面でも容易で、外国人にとっても親しみやすい都市です。ここに来れば、つねに素晴らしい経験が得られるのです」。

 経済や政治の不安定要素に取り巻かれながらも、初日の販売状況を見る限り、フリーズ・ソウルは依然としてアジアのアートマーケットにおける重要な拠点としての存在感を示している。今年の第4回は、市場の冷静化を背景にしつつも着実な成果を挙げ、アジア域内有数のアートフェアとしての地位をさらに確立する一歩となった。ソウルという都市の魅力と独自性を武器に、今後どのように展開していくのか、引き続き注目が集まる。

会場風景より